’03.1〜12
サリーが子供達(小学校の中学年)と裏の原っぱで遊ぶのを見ていると、色々な発見があって面白いと共に、私の勉強にもなります。
犬種に拠るところの方が多いのかもしれませんが犬にも性格があって、子供嫌いな犬も結構居るようです。幸いラムやサリーは、子供達と楽しく遊んでくれます。

子供達はサリーにかまいたくて、てんでんばらばらに勝手なことをします。ボールを投げる子、座れ、お手と命令する子、体を触る子、サリーにとってはどうしたらいいのかパニック状態です。
そんな中でも、ボールだけは必死に追いかけています。しかし、ボール投げも同時に2人から投げられたり、なげる振りだけをするいじわるな子がいて、ボール命のサリーはあっちうろうろ、こっちうろうろで見ていても可哀想です。
色々なコマンドを出されたり、ボールをてんでに投げられてパニックになるサリーを見て、今まで入れた訓練がだめになってしまうのではと心配になります。

サリーはこんなことができるんだと子供達に教えてやろうと、訓練科目のいくつかをして見せてやりました。
サリーの気が散らないように子供達には一箇所に並んでもらい、サリーが私のコマンドに従って上手くできたときは、皆で拍手をしてもらいました。
遠くで見てた監視の先生も、笑いながら拍手をしてくれていたところをみると、まんざら馬鹿にしているようでもありません。
こんな恥ずかしい経験も何かの役に立つだろうと思いながら、年甲斐もなく心臓をパクパクさせてやるうちに、恥ずかしさも何処かへ吹っ飛んでしまいました。
その後が大変です。また子供達はサリーをつかまえて、私がやったと同じことをサリーにやらせようと、てんでにコマンドをですものですから、サリーはまたも分けが分からなくなり、子供達から逃げ出す始末です。

ボールを投げて持ってくるのとは違い、サリーは子供達の出すコマンドに従うだろうか、これも興味のあることでした。
初めのうちは子供の言うことは一切無視、サリーも好きなようにボールを追っかけるばかりです。もっとも何人もの子供が一度に色々なコマンドを出すものですから、サリーもどうしたらいいのか分からないのは無理もありません。
こういう時には、昔も今も子供の中に取り仕切る子がいるもので、回りの子に手出しをさせないで、一人サリーにコマンドを出す子が出てきました。すると、サリーもその子の言うことは聞くのです。
子供にとって、犬が自分の命令に従うのは痛快なことなのでしょう。その子の満足そうで得意げな様子は、見ていても良く分かります。
特に「マテ」を掛けて、「ヨシ」でボールを取りに行かせるのなんかは、面白くってしょうがないようです。

子供達が遊んでいる中で夢中になっているサリーを、コマンドに従わせるのは私でさえ容易ではありません。サリーは回りのことが気になって、私のコマンドも上の空です。
そこで子供達に言ってやりました。
「サリーは今から自分が何をしたらいいのか、回りのことが気になったら何もできない。サリーに今からしてもらいたいことを教えるには、サリーに集中してもらうことが大事なんだ」と。
そう言って私はボールを取り出し、回りが気になるサリーをボールに集中させ、その上でマテをさせました。そして私は片足を上げ「トベ」のコマンドを出して、私の足を飛び越させたのです。みんな驚いて拍手。
「もっと高く飛べないのですか」と質問する子に、「飛べるんだけど、おじさんの足が短いからこれ以上高く上がらならないんだよ」と言って諦めてもらいました。

実はこのことで私が一番教えられたように思いました。足が短いことではなく、「訓練モードにする」ということが、どういうことなのかということを。
サリーを子供達と遊ばせながら、サリーを集中させ何気なく私のコマンドに従わさせる、こんな効用を見出せればいいと、今日も子供達と一緒に遊んでもらっています。