今でも強烈に残っている、小学校三年生の頃の思い出があります。新しく担任になった女の先生は、なぜかしら生徒の中でも人気のある先生でした。その先生が私達の担任の先生になったのですから、クラスの期待はそれは大きなものでした。
そういえば、今でも生徒内ではあるかもしれませんが、新聞に載る新学期前の先生方の異動記事に一喜一憂したのを覚えています。

小学校の授業は、全科目担任の先生が教えてくれますので先生も大変だった事でしょう。いじめや、喧嘩もありましたが、記憶が薄れたせいか今ほど陰鬱なものではなかったように思います。それでも、授業と生徒の指導で先生の苦労は大変だったと思います。

期待の先生は、やはり期待通りの魅力ある授業でした。そのなかでも、私達を虜にしたのは国語の時間に読んでくれた、冒険小説「宝島」でした。
スティーブンスン作のこの小説は、中学になって英語の教材に使われ、この時はいささか苦痛をもって読んだように思います。しかし、小学校の頃に先生が読んでくれた時は、次に読んでもらうことが待ち遠しいほどわくわくしながら聞きました。

トレローニさんやリブシー先生と宝捜しに出かけるジム少年が、一本足の海賊シルバーと繰り広げる冒険活劇は、娯楽の少ない時代だったからかもしれませんが、胸躍らされた物語でした。

そして大変残念な事に、ジム少年が宝島に辿りつく前にその先生が病気で入院してしまった事でした。なんでも肋骨を何本も切って手術する大病だったようですが、その事の記憶はぼんやりとしてます。その後の続きが気になって、本らしきものを自分で買って読んだはじめでした。

きっかけはどんな事で起きるか分かりませんが、元来本を読むことの苦手な私が、物語を読んでみようと思うきっかけになった忘れられない子供の頃の思い出でした。