1年最後の納めの場所は、横綱 曙の優勝で幕を閉じました。千秋楽最後の曙対武蔵丸の横綱対戦をご覧になった方も多いと思います。この相撲で、日頃から気になっていた曙の所作を見てちょっと考えさせられました。
気付かれた方もいらっしゃると思いますが、勝った曙が武蔵丸の体を、作ったようなきつい顔をしてトンと突き放した場面がありました。勝負の世界ですから、勝ち負けははっきりしてますし、勝者は多いに誇ったら良いと思います。
この時の所作に限らず、曙の常からの土俵周辺の動きがことさら威風堂々を装った、無理に眼光鋭くにらめつける所が気になっていました。横綱の威厳を、無理に作ろうとする不自然さが気になります。

一方貴乃花の相撲を見てますと、先場所の八日目までの相撲は正にこれぞ横綱相撲と思えるほど堂々としていたように思います。私は別に貴乃花のファンではありませんが、胸を出した正攻法の相撲は、これぞまさしく横綱と思わせました。しかし、九日目以後の相撲は、充分でないのに横綱相撲を装った、前半の化けの皮のはげたお粗末な弱い横綱の相撲でした。
そうして、貴乃花の所作で気になるのは負けた力士に対し、立ち上がるときや土俵に上がる時に、いかにも慈悲深く手を貸してやるしぐさです。
実力のある傑出した横綱であれば自然に見えるでしょうし、強いばかりではなく実は心根のやさしい横綱なんだと一層尊敬もするでしょう。今の貴乃花を見てると、あまり強くもない横綱が格好だけ付けてとひんしゅくを買うだけではないでしょうか。
曙にしろ貴乃花にしろ振る舞いは横綱然としていますが、圧倒的な力があるわけでもなく、誰が優勝してもおかしくないと言うのが、いまの角界ではないでしょうか。

これと似たような事象が色々な世界であるように思え、その世界だけでなく社会全般が落ち着かないでいる遠因ではないかと感じることがあります。やはりその世界では、その世界を力強くリードして行く傑物がいないと、良い方向には向かわないのではないかと思います。
ワンちゃんもきっと、人間の強力なリードを求めていると思います。そうでないと、とんでもないワンちゃんがそこいらにのさばってくることでしょう。