あの人は人柄がいいとか悪いとか言いますが、人柄って一体何をさして言っているのでしょうか。多分に主観的であり、また人間の持つ多様な能力のある一部分を指しているようでもあり、総合的な評価を言っているようでもあります。

私は直接会ったことも話しを聞いたこともありませんが、亡くなった小渕首相は人柄が良かったと新聞に出ていると別に反論なくそうだなと思います。これが亡くなった首相でも田中角栄さんだったら、人柄が良かったと出ていたらう〜んそうかなと、納得行かない気になります。むしろあくの強い人だったと言えば納得するでしょう。
独断と偏見を顧みずさらに続けると、プロレスラーのジャイアント馬場は良かったがアントニオ猪木はどうも、プロ野球の長島監督は良かったが金田さんはどうも、大相撲の大鵬は良かったが北の湖はどうも等など、勝手にイメージを作っているものです。人柄って一体なんでしよう。

人間をテーマに据えて考えると、最後は人間として生きて行く意義だとか存在価値まで及んできて、とうてい私のような凡人には語れるようなテーマで無くなるのでほんの入口のところで止めておきたいと思います。
よくいわれる人柄とは、どうも一般的に言われているその人の才能や能力とは別の範疇の評価のように思えます。才能や能力が人間の脳と身体の連携活動によって発揮されるとするなら、人柄は言ってみれば脳の働きだけで充分発揮できる能力のように思います。
脳はその部位ごとに司る働きを持っているそうですが、近年この脳の持つ機能をシステムとして研究することが随分進んできたようです。認知脳科学といわれるそうで、いわば脳と心の関係を解き明かしていく研究です。人柄はまさにこの科学分野のうってつけの研究テーマではないでしょうか。
認知脳科学では、脳の機能をつなぎまとめる働きをするなかで前頭連合野という場所が、かなり人柄に関係ありそうだということが分かってきたそうです。
この場所は躾とも大いに関係あるそうで、また「他人の気持が分からない」などの想像力の貧しいのは(科学的に言うと知性障害)この場所の発達が未熟なことに原因があるとも言われています。

人柄を科学的に解明できるのであれば、人柄を育てる方法はないものでしょうか。北大 沢口教授によれば幼児期の栄養と環境が大切だと言っておられます。
栄養は、まつたけ、ごま、海草、野菜、魚、しいたけ、いもをよく与えること。環境は、多くの家族、怖い親爺、うるさい近所のおばさん、わるがき仲間にもまれて育つことが、前頭連合野を刺激し発達させるそうです。
人柄とは人の持つ基本の資質で、その上に人それぞれの優れた才能や能力が備わればと思うのは理想に過ぎることでしょうか。
心の隅の何処かに、ラムの次ぎの子こそはと思う心と同じ気持ちになって、なんだか気分が沈んできました。