家内が入院している院長が著した「脳卒中の予防と治療」によると、出血後の6時間がゴールデンタイムと言うそうです。この6時間の間に血腫を除去できれば、後遺症も極力押さえることができると書いてあります。残念ながら家内の手術は、発症して3日後のことでした。
手術について説明をしたいからと医者から言われて、どんな手術をするのか不安な面持ちで説明を受けました。

「血管の写真を見る限りでは、手術は問題ないと思います。もろくなった血管に血圧が高いと、一番もろくなった血管が破れて出血するのです。
手術は至ってシンプルな方法で行います。出血の部位がCTで特定できますから、その場所に近い所の頭蓋骨に穴を開けて、ストローのようなもので血を吸取るのです。
射し込む場所はコンピュータで正確に制御してますが、どの程度吸取るかはCTを見ながら決めます。血液はゼリー状になっているので、旨く吸い込めるかどうかはやって見ないと分かりません。血を採ることによって、せっかく止まっている出血が再発する恐れがあります。
この血は、ほっておいても半年もすれば吸収されてなくなります。手術は、半年後の状態を早く作ってやろうとするもので、半年後に回復する状態以上に良くなると言うものではありません。
この手術をすれば、リハビリも早く行うことができますので回復の状態が早まるというメリットはあるといえるでしょう。
血をとることによって、圧迫されている脳細胞は正常になる可能性はありますが、毛細血管が破れたことにより脳細胞が破壊されて、そこの機能は損なわれています。
こういう手術ですが手術を受けますか、受けるようでしたらこの承諾書にサインして下さい。」

「お願いします。ところで、頭蓋骨に開けた穴はどうなるんでしょうか」
「ほっておいてもかまいませんが、穴に合わせて凸状の蓋をして縫合します。」
「くどいようですが、どれぐらいの穴を開けるのですか」
「1円玉ぐらいの穴ですが、もっと大きく開ける手術もあります。これなんかはそのままでもいいんです・・・そんなのは・・・」
「分かりました。よろしくお願いします。」
手術は無事終わり、血腫のほとんどが除去できその後の出血もありませんでした。手術が済んで医者から言われたことは、後は本人の回復の意慾と努力と、そして家族の協力次第だとのことでした。

後になって、何であんな質問をしたのだろう、なんで拘ったんだろうと思い返しました。頭蓋骨の穴のことをです。
考えてみると、この手術で大切なことは血腫が旨く取れるか、取る事のリスクを回避できるか、そして何と言っても後遺症がどの程度回復できるかということのはずです。頭蓋骨の穴なんかは、ほっておいても治ってしまう類ものです。しかしあの時は、一番分かりやすい頭蓋骨に開けた穴の結果が、気になって仕方ありませんでした。

そんな大それたことではないのかもしれませんが、モノの本質をつかむということができてないなと思い知らされた質問でした。今でして思うと、医者の対応も何でそんな枝葉末節なことをという気がします。
内側の、見えない大切なものより外側の、見たくれに思いがいっている様に思えました。人体をそんな言い方で言うのはおかしいかもしれませんが、ハードウエアは時間がくれば治るでしょうが、ソフトウエアは未知の分野が多くて不可解ですが、ついハードの方に気を取られてしまいます。

ラムとの共生もそうかもしれません。本当のラムの内なる良さが分かっているだろうかと、思い直しています。そのためにはまだまだ一緒にいる時間が短いのかも知れません。そんな思いで、またラムと付き合って行きたいと思っています。妹のサリーも来ることだし。