年を取ると涙もろくなって、つい涙腺がゆるんでしまうことが多くなりました。
最近の涙についての迷言は、「涙は女の武器、男は女に泣かれると弱いんだ」という主旨のことを、どこかの首相が言ったようですが、男の涙、女の涙というものがあるのでしょうか。

河島英五の「酒と泪と男と女」の歌詞の中にも、それらしきことが歌われています。
「忘れてしまいたいことや、どうしようもないさびしさに、つつまれた時男は、酒をのむのでしょう。
・・・忘れてしまいたいことや、どうしようもない哀しさにつつまれた時女は、泪みせるのでしょう。
・・・またひとつ女の方がえらく思えてきた、またひとつ男のずるさが見えてきた(は男に都合が悪いので省略)、
・・・俺は男、泪は見せられないもの・・・。」
男気の強い河島英五は、男は涙を見せてはいけないものだと歌っています。女は、泣くことによって憂さを晴らすのは許されるが、男は、泣くことによって憂さを晴らすのは男らしくないというのでしょう。

男の涙って、女性の涙と違って何か特別な意味があるのでしょうか。私も男の端くれですので許してもらいたいのですが、あると思っています。しかし、はずかしながら私も結構泣く方だろうと思います。
いや、それは単に年を取ったからで、年を取ると生理的に涙腺がゆるむことは分かってるんだ、といわれてしまいそうですが、たまには男の涙もでているんだろうなと思ったりしています。

家内が入院して夜中一人で居る時、つい涙がでてくることが何回かありました。そんな時、酒 (特にウイスキーをロックで飲むのがいいです) と気の利いた音楽 (特にアダージョ系がいいです) があれば、確実に自然と涙か湧いてきます。
そんな時、何を思って涙が出てくるかと考えてみると (これは後で冷静になった時思い出します)、
「息子達夫婦も子育て戦争で大変だろうな、頑張って生活しているな」、
「お母さんも悔しいだろうな、健康な時のことを思うと自由が利かず苦労するだろうな」、
「ラムもサリーの面倒をみさせられて、それなりに気を使ってるんだろうな」、
「サリーも一生懸命に食べて、生きようとしているんだな」
なんてことを考えると、涙が湧いてくるようです。不思議と、自分の身の不幸を嘆き悲しんでの涙ではないのです。ひょっとして、これが男の涙っていうやつでしょうか。

冗談じゃない、それは単なる酒を飲んだ上の、泣き上戸にすぎないんじゃないかといわれそうですが、そうかもしれません。
しかし涙が出たあとは意外とすっきりするのです。やはり回り回って身の不幸を嘆き、涙して憂さをはらしているのかもしれません。
誰も居ないところで一人酒を飲みながら涙する、人前ではにこにこしながら自然に振舞う。これって演歌にも出てくる女の一人酒、 「悲しい酒」 の世界ですね。この時の酒は、もちろんウイスキーは似合いません、当然日本酒。
ようは涙には男も女もなくって、人間の人としての涙があるんでしょう。今夜も酒をあおって、おっと、今夜はお母さんが横で、右手のリハビリをやってました。