以前には顧客第一主義というカンバンを掲げている企業は結構多いように思いましたが、最近は会社紹介などでこのカンバンを見掛けることが少なくなったように思います。もっともこのカンバンを掲げていると、多くの顧客や消費者からいかにも嘘っぽい、馬鹿にしていると思われるほど、このところ企業第一主義と思われる事件や事故が新聞やテレビを賑わせています。
産地を偽ったり、混ぜものを売ったり、欠陥品を隠していたり、儲けるためなら何でも有りといった風潮は、こんな所にまで顧客責任を持ち込まれたのでは、顧客はたまったものではありません。
製品を売る者、サービスを売る者を問わず、顧客をないがしろにしている場面に遭遇して不愉快な思いをするのは、あながち年をとってひがみっぽくなったせいばかりではなさそうです。

食事の準備のため自分がスーパで買い物をするようになって、顧客を大事にしていないなと思うことが時々あります。
すいてるレジに並んで勘定をしてもらおうとしたら、そのレジの人は、客を目の前で待たせてやおらレジスターに溜まった一万円札を勘定し始めました。定期的に集金にくる準備のために、客を待たせて自分の仕事をしているのです。むっとして他のレジに並び変えたら、それと分かったらしく「すいませ〜ん」と私の籠を自分のレジに持っていって勘定を始めました。
これなんぞはいいほうで、ある時は並び替えたら、「何で変わるんだろ〜」という顔をしながらせっせと札を数えている人がいました。顧客よりも自分の仕事の方が大事なんでしょう。

レジの人は、勘定をするために商品をレジに通して別の籠に移し変えますが、これがまた客の立場に立ってないのに腹が立ちます。きれいに籠に移し変えているようですが、自分の詰め替え易いように大きいもの、丈夫なものから順に籠へ入れていきます。
これを受け取った客は商品をビニール袋に入れる時、一旦上のものを出してから下になった大きな丈夫なものから入れて行きます。そうしないと卵とかパンを下にするとつぶれて持って帰るうちに壊れてしまうからです。きれいにきちっと詰め替えてくれているようで、客にとんだ手間を掛けていることを知らないのでしょうか。

買った商品はというと、これもまた使う顧客のことを考えずにパック詰めされたものが多く、中身を取り出すのに苦労します。造る企業にとっては、輸送に安全で、いかに安くパック詰めするかばかりを考えて、客が取り出すことなど二の次になっているからでしょう。
豆腐のパック詰めを開けるのには、相当の指力と工夫が必要です。中には開けやすいように工夫したものに出くわすことがありますが、こんな時は会社の名前をつくづく見てしまいます。
やっと開けた豆腐のパックも、端が残って真中だけが裂けて開いた場合などは最悪です。そのまま出すと豆腐か崩れて使い物にならなくなります。仕方なくはさみで残ったところを箱の端に沿って切りとって、やっと逆さにして取り出す始末です。何とわずらわしいことでしょう。
食器やビニールの箱を買った時などは、その商品に貼られた値段のシールや、商品の説明用に貼られたシールも、買った客の事を考えてないなとつくづく思います。
この手のシールは取れにくいことと、取った後に残る粘着剤の始末にはほとほと手を焼きます。さいごにはベンジンなんかを持ち出して拭かないと、跡が残って汚くて仕方ありません。これも、使う顧客の事を考えてないいい例でしょう。

身の回りのこんな些細なことから始まって、生活していくための基本的な仕組みのところまでもが、顧客(対価を払ってサービスを受ける立場の者)よりも企業(為政者も含めて)の立場でしか仕事をしてないような風潮には、日本の根本の所で何かがおかしくなっているのではないかと思います。
政治家や医者や教師のようないわば先生と呼ばれる人の個人プレーから、企業のチームプレーまで、そのプレーの対象である顧客をないがしろにする原因はどこからきているのでしょうか。その一つに、個人やチームの権威やブランドにたいする認識の希薄さにあるような気がしてなりません。いわゆる「沽券にかかわる」という気持のなさが、何でもありの風潮を作っているように思うのです。

対象が個人であっても企業であっても、私達がなぜブランドを重んじてきたか。まして付き合ったこともない使って見たこともないものを選択する時、その決め手になるのがなぜブランドなのか。
ブランドには、顧客を、消費者を、国民を裏切らない信頼と権威を感じるからではないでしょうか。今起きている顧客を裏切るような事件は、そのブランドを守りきれない個人やチームやトップが、政治をし商品を造って売っているような気がします。
つつましやかに生活している国民も、自分のブランドを大事にしながら、時として頭をもたげる悪をつぶしながら生きしています。そして無意識の内にも、自分が家庭、地域、会社、国家社会に認められるブランドになるように努力しています。
しかし最近は、いとも簡単にこのブランドがある日突然に消えてしまうような不祥事が多すぎます。鈴木、田中議員しかり、雪印、日ハムしかりもっとブランドをしっかり守って欲しいものです。