’05.4.30

ラムとサリーを連れていつものように散歩しての帰り、ちょっとしたハプニングがありました。
最後に裏の原っぱでフリーランをさせてやろうと立ち寄りました。原っぱは真中を杭で仕切られていて、いつも遊ぶ所とは違う奥の原っぱで子供達3人が野球をして遊んでいました。
ラム達はそこまでは行かないだろうと思ったのが甘かった、リードを離したとたんサリーはその子達の方へまっしぐらに突進して行きました。ボールが目当てです。

子供達にじゃれ付いて、その後転がっているボールを咥えて走り回っています。
「そのボール新しいんだから・・・」といいながら、一人の子がサリーを追っかけます。サリーは立ち止まってその子の傍に行くと、「ボール出せ」と言われてボールを放しました。
私は子供達が迷惑そうなので、サリーを呼んでその子達から離しました。あまり見かけない近くの子供達のようです。

ラムとサリーを繋いで、原っぱを出て家のほうへ帰って行きました。家までは原っぱの横の路地を回って行くのですが、しばらく行くと後ろから子供達の声がします。
気にせずに歩いていると「おじさん」と声を掛けられました。見るとさっきの子供達です。みな同じ小学校の4年生位の男の子です。
「なんだい」
「このボール、さっき犬に咥えられて切れてるんだけど」
「え〜、それはごめん、ちょっと見せて」 手にとって良くみても別に変わったところはなさそうです。いつもサリーが遊ぶ硬式仕様のソフトボールです。
「別に何ともないようだけど、どこが切れてるのかな」 その子はボールを手で回して見ながら小さな声で、
「毛がでてるんだけど」「どれ・・・」 ボールをかざしてながめてみるんですが、別に変わったところはみあたりません。
「別に何ともないようだけど、犬が咥えて傷がついたんならおじさん弁償してやるから、どこに傷がついてるのかな」
「・・・・・」
「遠慮しないで、思ってること言ってごらん。おじさん、怒ってるわけじゃないよ、傷がついたんなら弁償するから」
「犬が咥えて、汚れた・・・」
「汚れたのが気に入らないんなら洗ってきれいにしてやるよ、だけどボールで遊んでるとこれくらいは汚れるぞ」
「・・・・・」
「ほかの子達はどう思うんだ」
「・・・・・」
「ボールが切れたり、傷がついてるか君達も見てくれないかな」 そう言って真剣な顔をして私の方を見ていた一番大きな子にボールを渡して見てもらいました。
小さな声で「なんともない」
「おじさんの家はあの原っぱの所にある家だから、家に帰ってお父さんやお母さんに話して何かあるようだったらお出で。」
「知ってるよ、この犬になめられたがあるもん」 とさっきの大きな子。
「ところでこのボールは誰のかな」 すると別の子がボールが切れたと言った子を指差しています。
私はまたその子に向かって「どうなんだ、おじさんに何をしてもらいたいんだ。おじさんは子供が好きだし、野球もすきだ。怒ってるわけじゃないから、思ってることをいってごらん」
「・・・・・」
「行くよ、何かあったらお出で。じゃあ、さようなら」
「・・・・・」
家に帰ってから原っぱを覗くと、さっきの子供達はまた同じように野球をはじめていました。暗くなるまで遊んでいました。

一体あの子は何を言いたかったんだろうか。ボールが切れたように錯覚して見えたので、弁償して欲しいと言いに来たのだろうか。
良く見ると何とも無いので、ばつが悪くなって「毛が出た」とか「汚れた」とか言ったのだろうか。
自分の誤解にばつが悪くなって黙ってしまったのだろうか。その割には「おじさん」と声をかけて文句を言いに来たほどの勇気があるのなら、「ボールは何とも無かった」と言えないのだろうか。
わざわざ文句を付けにきただけに、正直なはずの小さな子だけに、・・・何ともすっきりしない終わり方が気になりました。