’05.7.9

中国や韓国が歴史教科書の問題をとりあげて、書かれている内容が歴史事実を歪曲して日本に都合よく書かれていると抗議しています。しかし問題にしている時代の歴史を教えている学校が、一体どれくらいあるか疑問に思います。問題にするほど、現代の歴史を教える授業時間があるでしょうか。

私は高校時代に学んだ日本史も世界史も苦手で興味がありませんでした。全くの言い訳ですが、これほど面白い役に立つ教科を、嫌にさせる教え方に問題があったのではないかと内心思っています。
何の教科でもそうですが、好きになるきっかけは興味と驚きをもつことではないかと思います。そういう点でいうと、日本史も世界史も現代史、せめて1900年頃からの歴史を教えることから始めると、どんなにか興味と驚きを感じるだろうと常々思っています。
今でもそうでしょうが日本史なら縄文時代、弥生時代から、世界史なら古代エジプトやメソポタミヤから始まって、延々と教えられる歴史は現代の歴史を教わる前に学期が終わってしまします。
なぜ今の日本がこんな状態にあるのか、世界の国々がみる日本観は何故そうなのか、今に生きる若者がそのことに興味と驚きを感じたら、きっと日本史や世界史を真剣に学んでみようと思うはずです。この年になっても、この私が今思うくらいですから。

新聞の書籍紹介で、半藤一利著「昭和史」(平凡社)を知ったのは全くの偶然でした。講義スタイルの文章は平明で、読んでいてよく頭に入ります。
あとがきを読んで納得しました。あとがきには、編集者の山本明子さんの執拗な説得から始まったとあります。
「学校ではほとんど習わなかったので昭和史のシの字も知らない私たち世代のために、手ほどき的な授業をしていただけたら、たいそう日本の明日のためになると思うのですが」という説得に応じ、講義調のしゃべりを録音して文章に編集したものですから読みやすいのは当然です。
日本史もここから始めて、歴史に興味と驚きを感じ、それではといにしえの古代に遡って学んでいくとどんなにか面白い勉強ができるのではと一層思いました。

この「昭和史」は開国から明治維新をへて、日清、日露戦争に勝って列強の仲間入りする国造りの40年を紹介、そして昭和に入ってから太平洋戦争で敗戦国となるまでの20年を詳細に解説しています。
「昭和史」はそこで終わっていますが、その後敗戦から繁栄を勝ち取る40年があって、名実共に昭和が終わります。そして昭和の繁栄が泡と消え、行きつ戻りつの閉塞感の中に今我々が生きていることを思うと、歴史から学ぶことの大切さを思い知らされます。

「昭和史」から学ぶことは、1つはマスコミに煽られ国民的熱狂に流されてはならないこと。2つ目は物事は自分の希望するように動くと考えてはならないということ。
3つ目が周りの情勢を見て判断しない日本的島国根性をあらためること。4つ目が国際常識をもち、独善におちいらないこと。
そして最後の5つ目はすぐ成果を求める短兵急な発想を改め、大局観を持ち複眼的発想をすることだと教えています。

しばしば開眼したような気になって挫折するのか常な私ですが、ちょっとした理解のきっかけを手繰って行けば、大きな理解に繋がるような気はしています。この「昭和史」も、日本史を読み直してみようと思うきっかけにはなりそうです。