’05.11.19

以前ここで犬の喜求欲について書きましたが、いささか喜求欲の理解するところがが変わってきましたので、今の私が理解していることを書いてみたいと思います。

「喜求欲」とは「犬があることに喜びを求める欲望」と読んで字のごとく解釈しましたが、それは「犬のやる気」だと解釈した方当っているようです。
ではその犬のやる気はどうして出るのか、どうして出してやることができるか、そのことがサリーと訓練やドッグショーを一緒にする時の私の悩みでした。
サリーが訓練所から帰ってきて早2年と4ヶ月経ちますが、帰ってからの1年間は訓練やショーに対する喜求欲がなく、嫌々ながら付き合っているという感じでした。サリーは訓練やショーには、向かない犬ではないかとさえ思いました。

そしてある時訓練についての解説を読んで教えられたことは、サリーはコマンドが出されると気持ちの上でも動きの上でも、縛りが掛かってしまうような状況になるのではないかと思うようになりました。出されたコマンドに、恐る恐る従うという感じです。
同じコマンドが出されても、「コマンドに従わないと叱られる」と「コマンドに従うと楽しいことがある」では、犬の気持ちは全く違ったものになるのではないかということです。
そのことが分かってからは、サリーと一緒にコマンドに従うことは楽しいことだと思わせる練習をやってきました。具体的には、サリーの好きなボール遊びを交えての練習です。
そんな練習を始めて半年もする頃には、サリーのコマンドや練習に対する様子が楽しいものに変わってきたように思います。これはコマンドに従うことや練習すること自体が、サリーにとって楽しくなったからの結果でしょうか。どうもそれだけではなさそうな気がします。

犬の躾をを訓練士さんにお願いした時、はじめのうち飼い主が一様に感じることがあります。
「なぜうちの犬は、訓練士のいうことは喜んで聞くのに、飼い主の私がやっても喜んで従ってくれないのだろう」と。
私もそのように感じました。多分訓練士さんの犬を扱う技術が優れているからだとか、飼い主は四六時中一緒にいるからつまらないのだろうとか、ご主人だから煙たいんだろうとか、色々勝手に考えてそんなものだろうと思っていました。
また犬と一緒に訓練やショーに出て、犬に嬉々として動いてもらうためには、直前まで指導主たる飼い主は犬に接触しない方がいいとか、人目に触れさせないで寂しい思いをさせておいて、飼い主に会った時一気に喜びを爆発させるような状況を作った方がいいとか、犬の喜求欲を出すために色々工夫をしてきました。
しかし犬の喜求欲を人工的に作り出すことは、どうも本物の喜求欲とは違うような気がします。では、本物の喜求欲とはどんなものなのでしょうか。それが今私が理解している喜求欲ではないかと思っているのです。

コマンドに従うこと、訓練そのものを好きな犬はプロの犬ではないでしょうか。狩猟犬、麻薬犬、プロの犬はその仕事自体が好きな犬だと思います。
では家庭犬の喜求欲はどこから出るか、仕事自体が好きなプロの犬と違い、普通の家庭犬は「飼い主と犬との信頼関係」から出るのではないかと思います。
訓練の基本に
・犬がその指導手を注目していたい犬にすることが訓練の基本
・犬が幸せな気持ちになったとき指導手に服従する
といわれますが、やはり犬の喜求欲を引き出すには、犬に信頼される飼い主になることが必要なのではないでしょうか。
どうしたら信頼される飼い主になれるのか、犬の飼い主に対する信頼度が犬の喜求欲で計れるとしたら、犬との共生も励みが出るように思います。