’16.10.2
太平洋戦争の末期、日本との休戦協定を一方的に破って急遽参戦した当時のソ連が戦勝国として奪った北方四島、日本の返還要求に頑として反対する今のロシア、その結果ロシアとは「平和協定」が未だ締結できずに今日に至る。
日本の歴代内閣が何度となく返還交渉をするも相手にされず、ロシアは既成事実を積み上げていく。
日本とロシアが唯一合意に達したのは、1956年(遡ること60年)の日ソ共同宣言で、歯舞、色丹の2島を日本に引渡し、平和条約を結ぶことでいったん合意した。その後ソビエト連邦が崩壊しロシアになり、日本もころころと首相が変わって、平和交渉も振り出しに戻った。
そして今、ロシアと日本の今太閤のプーチン大統領と安倍首相が、今度こそこの問題にけりをつけるべく会談を重ねている、というのが今の状況だろう。
日経の風見鶏のコラムに、このことが書かれていたので例によってつまみ食いをしてみる。

プーチン氏は過去の合意に基づき、北方領土の陸地面積の7%に過ぎない2島を日本に渡し、最終決着とするつもりだろう。
彼と14回会談した安倍氏も「先方の意図は分かっている」。それでもあえて交渉に臨むのは、次のような信念があるからだという。
日本の一番の課題は、国力格差が広がる中国とどう向き合うかだ。日米同盟を強めるだけでは足りない。平和条約を結び、中国をにらみ、ロシアともある程度協調する必要がある。
(2島返還で平和条約を締結するという)この路線が正しいかどうかは、(締結したあとの)結果が全てだろう。うまくいけば、日本の外交基盤は安定する。失敗すれば、対中戦略でロシアからたいした協力を得られず、領土(残りの2島)をただ取りされるという最悪の結果になる。
その危険は小さくない。ロシアの外交戦略家はこう警告する。
「ロシアは中国を警戒しているが、対立はしたくない。しかも、日本は米国の同盟国。日本と対中戦略で協力できる余地はかなり限られている」
プーチン氏との交渉は、一筋縄ではいきそうにない予兆が漂っている。

そんなコラムの横に、こんな記事が載っていた。
次期総裁を狙う自民党の石破茂全地方創生相は、都内で開かれたパネルディスカッションで「4島一括返還が一番望ましい。仮に2島返還が先行だとしたら、あとの2島がどうなるか、先送ってはいけない話だ」

そして同じ日の同じ新聞の中外時評というコラムにはこんなことも書いてある。
ロシアのテレビ局で「日本式のリセット」と題し、各界の専門家らが議論を戦わせた。北方領土問題では後ろ向きの発言が目立ったが、国民の関心事にはなっている。最近の日ロ外交を主導しているのは日本側だ。
この問題に打開策はあるのだろうか。ロシアの学者は「平和条約という交渉の名称を変えるべきだ」と提唱する。
平和条約は日本では北方領土問題の別名だが、ロシアの世論では第2次世界大戦の結果としての戦勝国と敗戦国の関係の固定化を意味するという。なぜ戦勝国が敗戦国に領土で妥協しなければならないのかと思っている。
いずれにせよ領土割譲につながる日本との条約締結は、プーチン大統領にとっては歴史的功績にはならない。それだけに日本が信頼できるパートナーとなる確信が得られるかが交渉の鍵を握る。
その意味でも、例えば「平和友好条約」と命名して、政治や国際連携、経済協力などのロードマップも盛り込んだ多面的な条約にすることがいいのではないか。

国と国との外交といっても、トップ同士の信頼関係が重要なことは過去の例からもよく分かる。安倍首相がプーチン大統領を、故郷の山口に招待して胸襟を開いて話をしようというのもそのためだろう。
国民は国の代表として、安倍首相に国政を任せている。ここはそっと心配しながら、成行きを見るのがいい。