’17.9.1
北朝鮮が核やミサイルを誇示しては、米国、日本、韓国を脅している。その目的が何であるか、諸説があるだろうが金正恩が本音を吐かない限りは憶測でしかない。もっぱら言われているのは、米国との平和交渉が目的だろうが今のような米朝間の威嚇の応酬では、まともな交渉などできないだろう。
日本からすれば、岡目八目の立場にある英国の論調が大いに参考になる。英フィナンシャル・タイムスの社説を、例の通りつまみ食いして、戯言を言ってみる。

安倍首相は、北朝鮮がミサイルを発射するたびに米国、本人は何でも相談できると自負しているだろうトランプ大統領と相談して、制裁と圧力を強めると呪文のように言う。
安倍首相の発言や行動は、北朝鮮の脅威は米国の問題のようにさえ誤解をする。今やミサイルが北海道の上空を断りもなしに飛んでいくことが、日本の問題でなく米国の問題だろうか。米国は極東問題を自国の問題のように口にするが、本土から遠く離れた北朝鮮が騒いでみても所詮遠い国のこと、態度はとっても心のうちはさほど問題ではないと思っているに違いない。
今や世界の警察を降りた米国が、遠い極東の問題を真剣に考えるはずがないと思える。まして、金正恩との個人的決闘を楽しんでいるトランプ大統領にしてみれば、日本への格好は付けるものの何をしでかすか予測不能だ。

フィナンシャル・タイムスの社説は、いま大事なのは日中韓が連携して自国の地域の問題を治めていくことだという。
韓国はこのところ国内の政治危機にとらわれ、日本の戦時中の行為に対する謝罪要求が激しい論争の的となっており、北朝鮮問題における両国の協力を困難にしている。
日本はつい最近まで、金体制の危機よりも中国の台頭によるリスクに気を取られていた。その中国は北朝鮮の脅威よりも、米国が対北朝鮮防衛のために韓国に配備した、地上配備型ミサイル迎撃システムの脅威に神経をとがらせてきた。
北朝鮮の危機が戦争に発展すれば、このような懸念は全てばからしいほと近視眼的だったということになるだろう。日本と韓国は金正恩のミサイルの射程内にある。中国は北朝鮮の同盟国だが、朝鮮半島での紛争は難民の流入、最悪の場合は死の灰が降りかかってくる事態にもつながりうる。
共通の脅威に直面しているという現実を受け入れれば、創意に富む地域的な外交努力の余地が生まれる。
安倍首相は、北朝鮮がミサイルを発射すれば、まず中国、韓国と話をすべきだと思う。

最後にトランプ大統領の問題がある。米国の主要同盟国でさえ、トランプ大統領の判断に重大な疑念を抱いていることは疑いようがない。そうであればこそ、アジアの主要国が北朝鮮危機で主導権を握ることがなおさら重要になる。   もっともな社説だと思う。