’20.4.28
サラリーマンの出世、誰しも気になるものだ。誰が見てくれているのか、だれが評価しているのか。日経に「コロナ時代の仕事論」というコラムが載っていた。連載物らしいが、書いている人は一橋大教授 楠木 建氏だが、腑に落ちる話なのでいつものようにパくる。

コントロールできないものをコントロールしようとする。ここに不幸の始まりがある。コントロールできないことについてはジタバタしないに限る。世の中には「どうしようもないこと」というのがある。
新型コロナウィルスはその最たるものだ。普通の人ができることは限られている。手洗いやマスク着用など公衆衛生のための基本動作を徹底する。不要不急の外出をせず社会的距離を確保する。リモートワークに切り替える。個人情報を積極的に提供する。できることはこれくらいで、あとはどうしようもない。

今日のわれわれは人類史上空前の「無痛社会」に生きている。昔と比べて世の中の「理不尽」は明らかに少なくなっている。それはそれで社会の進歩だ。しかし、いつの間にか「何でもかんでもコントロールできる」と思いあがっていたのかもしれない。世の中はコントロールできることばかりではない。コロナ騒動はこの当たり前のことを再認識し、生き方を内省する好機だと思う。
戦争や疫病とは無縁な平時でも、思い通りにならないのが人の世。仕事やキャリアも例外ではない。仕事に限って言えば、自己評価には意味がなく「お客」の評価がすべて。「お客」をコントロールすることはできない。つまり仕事というのは、定義からして思い通りにならないものなのだ。
競争戦略の分野で仕事をしているので「ストーリーとしてのキャリア戦略」を話してくれというリクエストを受ける。「計画無用、戦略不要」としかいいようがない。

仕事生活は長く続く。若い人であれば、10年、20年後に自分が何を持ってお客に価値を与えられるか分かるわけがない。キャリアは滑ったころんだの経験の中から事後的に見えて来るものだ。だとしたら、時々の自然の流れに逆らわず、流れに乗っていく。キャリアはそういうものだ。

美空ひばりいわく「川の流れのように」。テレサ・テンいわく「時の流れに身をまかせ」。ただし、川の流れに身をまかせるにしても「良い流れ方」というものがある。目の前にあるお客をきっちりと満足させ、できれば期待以上の驚きを与える。これを日々繰り返し気長に積み重ねていく。これが良い流れ方だと思う。
もちろん、すぐにはうまくいかない。流れていく過程で思い通りにならないことも多い。だが自分の土俵でいい仕事をして、お客にそれをどうしても欲しいと思わせることが実績となり、信用となり、自信となる。この3つさえあれば、他はどうでもいい。