’20.12.10
最近ロシアの動向をあまり見聞きしない。目にするのは新型コロナ、米国の大統領選挙、中国のコロナの間隙をついた動き等だ。そんな中、日経に「ロシア、中国の衛星国化も」なんて見出しの談話を記事にしたものを見た。例によってそのパクリだ。
話しているのはモスクワ大学付属大学の修士、アレクサンドル・ガブエフ氏で専攻は中国史とある。

ロシアは2014年クリミア半島の併合後、国際的な孤立の中で中国への傾斜を強めた。もっとも、両国が接近した要因は他にも幾つか挙げられる。
先ず軍事的側面がある。中ロは隣国同士で、ともに核保有国だ。領土紛争は解決済みだが、互いに軍事的な安全保障を築く必要性があるとみて、軍事協力を進めている。紛争が起き、対立すると極めて危険で、高いコストがかかるからだ。冷戦時代の深刻な中ソ対立の教訓があり、当時への逆戻りは何としても避けたい。

次の要因は、経済の相互補完性だろう。ロシアは天然資源の生産・輸出大国であり、中国は天然資源の一大消費国だ。ロシアにとって中国は欧州連合(EU)と同様、経済面では極めて理想的なパートナーとなっている。

3番目は政治体制の類似性だ。ロシアも中国も民主国家ではない。互いの政策は基本的に非難しない。中国もロシアの同性愛者への差別、市民によるデモや抗議行動の制限に苦言を呈することはない。「内政不干渉」の原則、インターネットの監視や規制などでは立場や主張が似通っている。

最後に、米国との関係だ。米中対立はトランプ政権下で拍車がかかった。感情的で混乱し、制御不能の状態にある。ロシアは元来、米中摩擦を否定的に受け止めてきた。21世紀の超大国の紛争に巻き込まれ、一方の陣営に取り込まれたくないというのがプーチン政権の本音だ。
だが当のロシアも米国との関係が悪化している。ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の毒殺未遂疑惑やベラルーシの政治騒乱などで損なわれた。ロシアは米中対立で中国寄りの立場を取らざるを得なくなっている。こうした傾向はおそらく長期間続くだろう。
中ロはもちろん、日本と米国のような軍事同盟の関係には至っていない。互いに戦略的な自主権を保持したいと考えている。多くの問題で立場の一致はあるが、すべてで一致している訳ではない。
互いに異なる関心分野もある。紛争発生時に、無条件で軍事援助する義務が生じるような関係は中ロとも望んでいない。

他方で経済分野では、中ロの非対称性がどんどん顕著になっている。中国の国内総生産(GDP)の規模はロシアのおよそ10倍になっている。経済的、技術的な格差は今後も広がる一方だろう。
プーチン政権が対中政策で当面の課題としているのは外交、軍事で戦略的な自主権を可能な限り保持することだ。つまり、中国と利益や関心が一致する分野では積極的に協調するが、関心が一致しなければ極力距離を置いていく。
例えば、インドとの国際紛争では中国寄りの立場をとらない。南シナ海の領有権を巡る問題でも中国の主張を支持しない。こうした立場をとることで、少なくとも10〜15年間は中ロのバランスを維持できると政権は見込んでいる。

だが、中ロ関係は今後10年間が非常に重要になる。中国は技術や経済分野で「パクス・シニカ」、すなっわち中国を中心とした世界モデルの形成をめざし、ロシアを一員として引き込もうとする。中国は技術や残生面の優位性、あるいは経済・貿易の様々な手段を使い、ロシアや旧ソ連諸国への影響力を強めていくはずだ。
中国の影響力は単に商品の貿易にとどまらない。ロシア次世代通信規格「5G」を中国の通信機器最大手のファーウエイの技術を使って導入している。10年か15年後に中ロのバランスは崩れ、ロシアは軍事面だけでなく、経済的な側面から中国の衛星国に陥るリスクが現実に存在する。

こんな記事だが、現在のロシアの姿を全て語っている訳ではないが、最も近い関係にある中国との上下関係が鮮明に語られている。それ程中国の地球上の存在感が大きくなっているということか。
欧州の姿もかすんでよく見えない。米国は頭の上のハエを追うのに忙しい。日本はすべての分野でその位置が下がって、経済力を振り回す力もないし存在感すら感じられない。
世界の力関係は米ロから米中に変わり、両国の覇権争いは今後どうなっていくのだろうか。話し合いの糸口すら見えない。