’21.2.7
企業の在り方として、水平分業(ネットワーク)型と垂直統合型がある。一昔前までは垂直統合型が企業の隆盛を占めていたが、最近は水平分業型が企業を繁栄させているという。
ひとつの製品を作るのにも、分業か初めから終わりまで一つの企業で作り上げる方がいいのか議論があった。ニューノーマルの時代を前に、これから先どちらがいいのか日経のコラムから借用する。

米IT(情報技術)産業が空前ともいえる活況を呈する中、象徴的な企業で2人の最高経営責任者(CEO)が退任する。アマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾス氏と半導体大手、インテルのボブ・スワン氏だ。べゾス氏は「勇退」、スワン氏は「事実上の解任」とされている。明暗がこうも分かれたのは、なぜだろう。

インテル衰退の背景にあるのはニーズの変化だ。半導体に求められるものが処理能力だけでなくなり、カスタマイズのしやすさ、言い換えれば「フットワークの良さ」になった。
インテルに先んじたのが英国のアームという会社だ。アマゾン、アップルなどの企業がアームの考案した「コア」と呼ばれる中枢部門の基本設計をライセンス契約で買い、用途に合わせてプロセッサーを自由に仕上げる方式を採用する。
そうしたやり方は水平分業型と呼ばれている。アマゾンもアップルも一芸に秀でた企業と組み、技術を持ち寄りながら、開発から製造までの時間、投資負担を少なくする。最終製品の投入も当然、早く安くなる。

垂直統合型で開発、製造を手掛けるインテルを追い込むものとは、そうしたネットワーク型の開かれた経営モデル。船団の先頭にはアームがいるよう見も見えるが、背後から風を送るのは実は、アマゾンやアップルだ。
教訓はいくつかある。インテルのように絶対覇者として永遠に君臨するかに見える企業でも、その技術や強さはいずれ陳腐化する可能性があること。そして、現時点では風は垂直型より水平型に吹くことだ。

これから水平型の挑戦を受ける自動車では、電気自動車(EV)への転換の動きが脱炭素という地球規模の課題解決の文脈で語られることが多い。これも見方を変えれば、アップルやソニーのような水平型と、トヨタ自動車や独フォルクスワーゲンのような垂直型の激突、攻防であることは間違いない。
日本にとってそうした時代を難しくしそうなのが、組織の体質かもしれない。例えば、戦前から続く終身雇用制は社員の帰属意識を高める「仕掛け」のようにも感じられるが、コンサルティング会社が最近よく実施する「エンゲージメント(やる気)調査」を見ると、日本企業の社員は先進国で最もその率が低いことが多い。

同志社大学の松山一紀教授は「日本企業で強いのは帰属意識より従属意識であり、自分に合わなければ、別の会社に移る欧米企業の方が(帰属意識の表れである)エンゲージメントは高くなりやすい」と見る。
それは「企業と企業が目的に合わせて有機的にネットワークを築く場合にも大きく影響する」という。水平型は唯々諾々とした内向きの従属型組織にはなじまない可能性がある、ということだ。
もちろん、水平型が永続的で最善の経営モデルとは限らない。米IT大手の「GAFA]にも最近は社会の反発が集まり、反トラスト法裁判も待ち受ける。攻防の歴史は、水平型の良くも悪くも破壊的な力と、垂直型の統制、秩序との間に生じる緊張状態の中で繰り返される、ということだ。

半導体や自動車の現状も歴史の一断面だろう。挑まれる側に求められるのは一つ。組織の弱点を見極め、レジリエンス(しなやかな強さ)を磨き、水平型をしのぐ新たな技術を生み出すことだ。

こんな解説のコラムだが、現状を分析しているだけでどちらの型がいいかはその時々、どちらの型が革新的な製品を作り出すかにあるのだろう。それと、従事する人間の働きやすさ、やる気がどちらの型にあるかということか。これからはますます、人間重視の企業であって欲しいと思う。