’21.5.27
新型コロナウィルスの感染拡大から1年以上経過するのに、なお国産ワクチンの実用化のめどが立たない。開発を妨げる要因はなにか。
大手製薬会社の第一三共 真鍋社長が新聞のインタビューに答えている。

第一三共を含め日本の製薬会社はワクチンへの投資をためらってきた。質の高い製品を作るためには大規模な投資が必要だ。採算が取れるのかも重要になる。
単独の企業で対応するには限界があり、政府主導で安全保障としてのワクチン確保をどうするのか、補助金や買い取り制度をなどを含めた議論が必要だ。

いち早く研究を進めてきたが、治験に入る前の試験で薬効評価や安全性評価などが求められ、実用化は簡単ではない。均一な製品を製造するのにも時間がかかる。
これまでは生産を大学に頼り、品質管理水準の意識も低かった。また先行するワクチンが普及する中、未接種の参加者を集めるのが難しい。厚生労働省が求める大規模治験をするのは困難だ。
治験の件数が少なくても先行するワクチンと同等の効果が得れれれば借り承認する、などの対応もあるはずだ。そのような制度がなければ日本でのワクチン開発はさらに難しくなるだろう。

国産ワクチンの生産は来年22年を予定しているが、治験次第だ。有効性の高い既存のワクチンとの違いを出せなければ、生産しても意味がない。
さらに保管や輸送ではまだ課題があり、差異化する方法は考えてはいる。ワクチンを一度凍結乾燥させて常温で運ぶ手段も選択肢の一つだ。

とまあこのあたりの話が、国産化が遅れている大方の理由のようだ。ワクチン製造投資に金がかかる、政府の援助が必要だ、作っても儲かるかどうか、そして何よりも治験が杓子定規で有事の対応が考えられてない、後発製品としての差別化ができないと作るだけ無駄だ、ということか。
いずれにしても出だしが遅い。やはりこのあたりも、国としての有事の取り組みがおそまつだからだろう。