’21.8.19
またまた民主主義の話題。民主主義がこの先どうなるのか、日経のコラムにエール大助教授成田悠輔氏の記事が載っていた。本音を言っているのか逆説的に言っているのか、とにかく面白くて恐ろしい記事だ。全部をパクるのは多くなるので、要点だけを抜粋する。

民主主義が重症である。21世紀の政治は、インターネットを通じた草の根グローバル民主主義の甘い夢を見ながら始まった。だが現実は残酷だった。中東民主化運動「アラブの春」は一瞬だけ花火を散らして挫折した。むしろネットが拡散するフェークニュースや陰謀論、二極化が選挙を侵食し、強烈なボピュリスト政治家が増殖した。
民主主義の敗北に次ぐ敗北。21世紀の21年間が与える第一印象だ。今や民主主義は世界のお荷物なのだろうか。それとも何かの偶然や民主主義とは別の要因の責任を、民主主義に負わせているだけなのだろうか。・・・・こんな書き出しで始まる記事だ。

民主国ほど経済成長もコロナ対策も失敗
ウイルス感染やITビジネスの成長、ウェブ上で情報拡散など、21世紀の主成分には共通点がある。常人の直感を超えた速度と規模で反応が爆発することだ。そこで爆発が起きる前に、徹底的な投資や対策で一時的に強烈な痛みを引き受けられるかどうかが成功の鍵となる。
超人的な速さと大きさで解決すべき課題が爆発する世界では、常人の日常感覚(=世論)に配慮しなければならない民主主義は科学独裁・知的専制に敗北するしかないのかもしれない。世界の半分が民主主義という政治的税金を金と命で払わされているかのようだ。

では、重症の民主主義が21世紀を生き延びるためには何が必要なのだろうか。2つの処方箋すなはち民主主義との闘争、そして民主主義からの逃走だ。

政治家報酬や選挙制度の抜本改革は困難
そう考えると、民主主義との闘争は初めから詰んでいるのかもしれない。ならば、いっそのこと闘争は諦め、民主主義から逃走してしまうのはどうだろう。

富豪が民主主義国家から逃げ出す可能性も
国家からの逃走は一部ではすでに日常である。一例が富裕層の個人資産。ルクセンブルク、ケイマン諸島、シンガポールと、より緩い税制や資産捕捉を求めてタックスヘイブン(租税回避地)を浮遊する見えない資産は、世界資産全体の10%を超えるともいわれている。ならば「デモクラシーヘイブン」もあり得るのではないか。
既存国家を諦め、思い思いに政治制度を一からデザインし直す独立国家・都市群が、個人や企業を誘致や選抜する世界を想像してみよう。新国家群が企業のように競争する世界だ。
現実、どの国も支配していない地球最後のフロンティアである公海を漂う新国家群を作ろうという企てがある。「海上自治都市建設協会」と呼ばれるもので、始めたのはビリオネアでトランプ前米大統領の公然支持者として名高いピーター・ティール氏らだ。お気に入りの政治制度を実験する海上国家に逃げ出す未来が具体的な建設案になり始めている。

フロンティアへの逃走はホモ・サピエンスの性だ。つい先日も米アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏が宇宙飛行をした。もし富豪が私たちの社会の外部に逃走してしまったとしたら・・・。
20XX年、宇宙や海上・海底・上空に消えた上級市民は、民主主義と言う失敗装置から解き放たれた「成功者の成功者による成功者のための国家」を作り上げてしまうかもしれない。
占拠や民主主義は残された者たちの国のみに残る、懐かしくほほ笑ましい非効率と非合理のシンボルでしかなくなるかもしれない。
そんな民主主義からの逃走こそ、フランス革命、ロシア革命に次ぐ21世紀の政治経済革命の本命だ。そして私たちに問いかける。民主主義からの逃走との闘争はいかにして可能か、と。

まあこんな記事だが、何とも面白くて恐ろしい。新型コロナは次々と形を変えて凶悪になり人類を悩まし、イスラム原理主義という狂信者が国家を乗っ取り、専制主義とも独裁主義ともいえる共産国家が繁栄する。
混沌の後にはこの地球に何が残るのか。人類が彷徨している間に、地球は創世期の地球にリセットされるのも有りうるようなこのところの気象現象だ。