’21.8.29
菅総理肝いりのデジタル庁が9月1日に発足する。新型コロナの蔓延が、日本のデジタル化の遅れをあぶり出した。昨年9月、まだ官房長官だった菅首相が早速飛びついた。
デジタル庁の成功の鍵を握るのは何と言っても国と自治体の役所手続きのデジタル化だ。新聞の記事をぱくりながら、具体的な中身を見てみる。一貫してオンラインで済ませる「デジタルファースト」、一度出した情報は再提出不要にする「ワンスオンリー」、そして民間のサービスを含め一括して済む「ワンストップサービス」と言われる「3つのONE」の実現だ。

デジタルファースト
書類の提出を全廃してオンラインで完結させるのが出発点になる。対面規制もなくす必要がある。「オンライン診療」が口ばかりで一向に実現しない。政府のウエブサイト「マイナーポータル」を知っている人がどれくらいいるだろうか。知っている人もその使い勝手の悪さに、最近では見向きもされない。
健康保険証の機能をマイナンバーカードに乗せる手続きがマイナーポータルでできることになっているが、医療機関の協力も少なくいまだ実現していない。

ワンスオンリー
特に市区町村窓口での手続きには不可欠だ。例えば住民票の写しなどは、役所側がデジタル技術で本人確認して反復使用するのを原則にすべきだ。

ワンストップサービス
言われてから随分時間が経つが、一向に役所の事務システムは改善していない。個々の事務のコンピュータ化は進んでいるようだが、縦割りの事務システムは変わってない。
家族の出生や死亡、引っ越しなどの手続きを一括化が喫緊の課題となっている。政府は制度化に当たって個人情報の一元管理回避を優先。民間サービスのマイナンバー適用を難しくし、ワンストップ化の壁になっている。

このような積年の課題を、デジタル庁が発足するからと言って一気に解決できるだろうか。あれだけ議論のあったマイナンバー制度を実現しながら、このマイナンバーを活用できてないのは政府・自治体の怠慢というほかないのではないか。
これらの課題解決には、デジタル庁の発足を最後の機会ととらえて、取り組んでもらいたい。「3つのONE」を推し進めれば、申請主義を原則にしている給付金やサービスの提供を、行政側から自動的に知らせて行動を促すプッシュ型支援に移行できるはずだ。
危機に直面した時に、公的機関からどんな給付やサービスが受けられるかを自覚していない人が多い。プッシュ型支援はデジタル行政の使命であると思う。