’21.9.10
また中国の話だ。今回は中国共産党の話ではなく、中国国内の話だ。そうは言っても中国は共産党が支配してる国だから共産党を抜きにしては語れないが、中国の国内に大きな変化がでてきている。毛沢東が復権のために起こした「文化大革命」のバージョン2という話。
NHKの「映像の世紀」は、現代史を理解するうえで大変興味深く見ている番組だ。この番組で中国共産党の変遷を放送していて、浅学な私もなんとなく中国共産党の流れが理解できた。
中国共産党の変遷を見る中で、今の習近平指導部が社会や思想への統制を強めているのは、毛沢東の「文化大革命」の再来を想起させるというのが今回のテーマだ。

今の習近平は経営者批判に加え、芸能や教育など若者の思想形成に影響力を持つ分野への介入が相次ぎ、中国はにわかに「文化大革命」の様相を帯びる。党中央宣伝部は、芸能人や企業を党が厳しく管理し思想教育を強化すると通知した。中国の芸能界は今後、メディアと並び名実ともに党の宣伝機関となる。
文化を通じた社会統制は1960〜70年代の文革を彷彿とさせる。毛沢東に先導された若者らが「造反有利」と叫びながら劉少奇やケ小平らの指導部や知識人を攻撃した。しかし文革10年間のうち3年でマイナス成長になるなど経済は壊滅的打撃を受けた。

その後、指導者となったケ小平は経済再建へ「改革開放」をはじめた。もし今、中国が「共同富裕」のスローガンのもと「富める人をたたく」発想で先祖返りするならば、経済成長は止まり、習近平指導部にも負の影響は及ぶ。それでも統制強化は止まらない。
教育も統制が進む。9月の新学期から小中高で「習近平思想」が必修化された。道徳の授業で学ぶ学生読本には習近平の地位の重要性や「習氏の金言」が並ぶ。個人の名を冠した思想教育は個人崇拝と隣り合わせだ。毛沢東に権力が集中しすぎたゆえに招いた文革の再来が恐ろしい。

企業家への締め付けも続く。中国のIT企業は、格差是正を目指す習氏が掲げる政策「共同富裕」のために競うように巨額の寄付に走る。企業家を動かす原動力が恐怖と不信になれば中国のイノベーションも止まりかねない。文革は毛が政敵を追い落とす政治闘争に主眼があった。今回もそうした側面が否定できない。

中国の歴史、中国共産党の歴史は政変によって変わる。中国の歴史がそれを物語っていると「映像の世紀」は締めくくっていた。