’21.10.15
政界が目まぐるしく動いた。自民党総裁選で岸田新総裁が誕生し国会で首班指名を受け、第100代総理大臣になったかと思ったら解散総選挙だ。
国力は軍事力で計っていいものか、では他の尺度で計るには何を計ればいいのか。これと言って定義するのは難しいが、そのヒントらしきものが日経の「大機小機」のコラムにあった。

いよいよ総選挙だ。この機に、我が国が世界でどのような立ち位置にあり、政権や企業はどんな課題に直面しているのか、経済面を中心に客観的な事実を検証してみよう。
まず第一は経済全般の評価だ。日経平均株価は経済のバロメータともされる。世界の株式市場と比較すると、日本を除く先進国では一貫して右肩上がりが継続しているのに対し、日経平均株価は30年前の水準にとどまっている。長期にわたる株価の低迷は経済成長の陰りを示す。

第二は、かつて経済一流とされた企業の評価だ。個々の企業の株価を検証すると低迷をしている企業が驚くほど多い。世界との比較では、時価総額で上位に位置する日本企業は今や極めて限定的だ。稼ぐ力が弱体化した証左でもある。従業員が老後に備えて積み立てた自社株式も資産形成につながっていない。
有力企業で長年続く検査不正やシステム障害も報じられている。従業員が主体的に発言せず行動しない体質が透けるという調査報告も公表され、企業の原点である活力の低下が懸念される。

第三は付加価値の総和である国内総生産(GDP)だ。平成の30年間で我が国のGDPが世界に占めるシェアーは10ポイントほど下落し、今や世界の6%程度まで落ち込んでいる。しかも給与所得の賃金も長期にわたり上昇していない。
豊かさの指標でもある一人当たりのGDPもシンガポール、香港などの後塵を拝し豊かな国から脱落しつつある。

第四は研究開発力だ。文部科学省の「科学技術指標2021」によれば、引用される我が国の論文シェアが急低下している。資源の乏しいわが国で研究開発力が低下すれば価値創造への期待が持てない。背景の一つに研究開発費の不足が指摘される。

第五はジェンダーギャップだ。世界経済フォーラムが公表する最新の指数は世界120位という情けない状態だ。ジェンダーギャップ解消に向けた取り組みは世界から周回遅れとされ、少子化が止まらない要因との指摘がある。
このように、わが国の立ち位置は昭和から一変し、とりわけ経済力、豊かさに陰りが見える。新政権はこうした事実を抹消面から受け止めて政策を進め、企業は原点に返り活力ある起業家精神を取り戻し価値向上にまい進せねばならない。

とまあこんな記事だ。選挙に向けて新聞は、各党とも成長・財源なき大盤振る舞いと揶揄する見出しを掲げている。「選挙公約と中国の言動はあてにならない」と常々かんじるのだが、国民を愚弄するような公約で票を取ろうとする選挙だけはお断りだ。