’21.11.5
産業構造改革で、日経の社説に書いていた大企業化の勧めに違和感を感じた。今日読んだ日経の「オピニオン」に載っていた某社社長デービット・アトキンソン氏のコラムには、日本の危機をこれでもかと書き連ね、中小企業の強化策の必要性を訴えている。
「失われた30年」(バブルがはじけて30年、衰退するばかりの日本)と言う言葉で語られる今の日本。今度の衆議院選挙では、信任を得た岸田政権では「新しい資本主義」を強調している。どんな経済を言うのか良く分からないが、このままでは日本は衰退してしまうから何かをしようと言うのだろう。
そんな日本の状況の一端を書いているコラムなのだろうが、読んでいて嫌になった。以下はそのコラム。

「新しい資本主義」の中心に「成長と分配」が掲げられているが、日本の課題は成長と分配で解決するほど甘くない。
給料が増えていないにもかかわらず、高齢者を支える生産年齢人口の減少により増税が繰り返され、可処分所得は減る一方だ。結果、企業は将来の先行きが見えないので投資をしない。従って国内総生産(GDP)も増えない。
そして急増する社会保障費を負担するために国の財政は悪化している。社会保障の増加は企業の生産性を高め、経済成長に資する生産的政府支出(PGS)を犠牲にする。日本のPGSはGDP比で1割を切り、先進国の平均24.4%を大きく下回っている。

この問題を根本から解決するには、社会保障費を削るか、生産性の向上しかない。しかし、現実にはどちらも反対が根強い。特に社会保障削減は、最大の票田たる高齢者が猛烈に反対する。そこに手を突っ込みたくないから、「成長と分配」になるのだろう。
しかし生産年齢人口が減るなか、労働参加率が限界に近い日本では、人口増加と言う形での自然増による大幅な経済成長はあり得ない。
となると、既存の生産要素を組み直し、生産性の高い分野に再配分するしかない。中小企業を強化せよということだ。新政権が示唆する大企業の努力と下請け救済では、大した生産性の改善はない。
生産性を大きく向上させるには、日本企業の99.7%を占め、7割以上の労働者を雇用している中小企業を全体として底上げするしかない。
また賃上げする企業を税制面で優遇するというが、それは性善説である。7割近くの企業は法人税を納めておらず、税率優遇程度で賃上げする企業は少ない。

さらに、高所得者の税負担を増やすとか、インフレにならない限り借金をしてもいいという現代貨幣理論(MMT)の導入も耳にする。高所得者の負担額などたかがしれている。MMTを使って社会保障負担を新札を刷って賄ったとしても、より以上に財政を悪化させるだけだろう。
日本経済衰退の本質は、高齢化社会の負担にどう対応するかである。まず持続性が高い「成長」を担保する中小企業の強化策がなければ、「新しい資本主義」の政策も画餅に終わるだろう。

こういうコラムだが、日本は大丈夫だろうかと不安になる。中小企業を整理統合して、規模の大きな企業にする日経の社説は納得がいかない。それよりもむしろ、大企業の生産構造を見直してそれぞれに相応しい中小企業に生産を委託育成して、アッセンブルする方がよほどいいように思う。
また富裕層だとか小金持ちの高齢者が、お金を使わざるを得ない年代の息子や娘に贈与しやすい税制を考える方が、お金の回転がよほどよくなると思う。
いずれにしろ新しくなった政権に、くたびれないうちに新しい政策を実行してもらいたい。このままでは、おちおち死ぬこともできない気がする。