’22.1.9
最近「格差是正」とか「共同富裕」という言葉をよく見る。特に米国と中国では持てる者とそうでないものとの差がひどいらしい。
上位1%の富裕層の資産が国全体の資産の20%以上あるという報道を見るとこれはすごい格差だと思う。日本も格差はあるが、米国や中国ほどではないようだ。
今日の朝刊には三菱地所が東京駅前に賃料が月500万円を上回る賃貸住宅を設けるとあった。国内では最も高い賃料で企業経営者ら富裕層の利用を見込むとある。2027年度には完成するらしい。

新年になってガソリンの高騰で暴動が起きている国がある。いろんな事件をきっかけに国民が暴動を起こす根底に生活の困窮が隠れている。国のリーダは国民の経済格差の解消にやっきとなっている理由もそのあたりにあるのだろう。
習主席の「共同富裕」のスローガンのもと中国の富裕層がやり玉に挙がっているが、その実現には冷ややかな目で見る向きもある。今日の日経のコラム「風見鶏」には、中国総局長 桃井氏の習主席の実績が書かれていた。その一部がこれだ。

米中対立は2021年、民主主義や自由・人権といった普遍的価値観を巡る対決へと拡大していった。いま世界は民主、専制を問わず経済格差や社会の分断と言った課題に直面する。今後のイデオロギー競争はいずれが優れたソリューションを提示できるかの勝負となる。
中国の習近平国家主席が格差是正を掲げる「共同富裕社会」。その思想のひな型を垣間見る農村が内陸深くにある。主導したのは福建省党副書記だった習氏。中央政府の指示で省を超えた貧困対策チームのトップに就任した。
現地の厳しさを見た習氏は福建省の支援で「まるごと移住」を決定した。資金豊富な福建の企業を動員してキノコ栽培・ワイン製造などの産業も用意した。習氏の思い入れは深く、国家副主席や主席となった後も訪問を続けている。習氏と言葉を交わしたという農民は語る。「前は水も電気もなく家は土でできていた。習氏のおかげだ」
夢物語と批判される共同富裕だが習氏には実績による習氏なりの確信があるのだろう。

翻って民主主義陣営はどうか。バイデン米大統領は富裕層への課税強化など共同富裕とも通ずる政策を公約に掲げて当選したが、筋道はつけられていない。昨年12月には民主主義サミットを開催したが、中国からこう反論された。
「優れた民主とは社会の分裂を生まず、社会階層や利益の固定化を導かない」「米国の政治家は利益集団を代弁し有権者を代表していない」
人権や自由を無視する中国が民主主義を語るのは噴飯ものだが、米国は果たしてこの指摘を見当違いだと言えるだろうか。少なくともこれらの課題にバイデン氏が必死に取り組んだという話は聞かない。

くしくも日本でも岸田文雄首相が「新しい資本主義」を提唱した。「分断が先か成長が先か」との議論も出たが、首相は成長しつつ分断を重視するという折衷案で臨むようだ。一方で日本が今目指すべきは新たな地平なのだろうか。
「世界で社会主義に成功したのは日本だけだ」と中国の金融界の重鎮から言われたことがある。高度経済成長を果たしつつ「一億総中流」と言われる平等社会をつくり教育も医療も行き渡った。国民皆保険制度は世界から奇跡と言われた。
日本にはすでに習氏の理想郷が及ばない本物の実績がある。今やるべきは成長と同時に実現しかけた「日本式の共同富裕社会」がなぜ制度疲労し行き詰まったかの分析ではないか。
首相は新自由主義からの転換も掲げるが「新自由主義下ですらイノベーションが停滞した理由」を突き止めなくては成長と分配の好循環など実現不可能だ。

より良き社会へ民主主義や資本主義を見直す「グレートリセット」は世界の潮流だ。横からいち早く解を見出してみせるのは国家権力を駆使した中国かもしれない。それでも富裕層から富を奪い自由も人権も無視したユートピアなどディストピアの裏返しにすぎない。
日本には世界に解を示すポテンシャルがある。そしてユートピアはきっと習氏の理想郷のように「山のあなた」にあるのではなく自分たちのすぐ足元にある。

フレーフレー日本と声を上げたくなるようなコラムの締めくくりである。そんな日本にするのは誰か、どこにいるのかいないのか、日本国民の選挙に懸かっているのだろうか。お願い、名乗りを上げて!