’22.1.16
およそ縁のない数字だが、日本国民の個人資産は2000兆円弱あるという話。
その昔、某財務大臣が「日本はいくら借金をしても国民が金を持ってるので破綻することは無い。国の借金は国民が債権者だからほかの国と違う」というような趣旨の話をしていた。

今日の日経の朝刊に「個人資産2000兆円の憂鬱」という記事が出ていた。国民は金を貯めることばかりで使い方を知らない、こんな使い方をしたらという記事だ。「生きたお金の使い方によって豊かな歴史が育まれていく」 いかにも日曜日らしい記事だ。

いつから日本人はお金を使わなくなったんだろう。積もり積もった個人の金融資産は、およそ2000兆円。少子高齢化とデフレの悪循環が続く中で経済は停滞し、わたしたちは過度の防衛本能を身に着けた。そして「お金の使い方」を忘れてしまった。
ある投信の創始者の澤上氏が会長職を退いた理由を尋ねたときのこと。思わぬ答えが返ってきた。「長期投信はお金を貯めるだけじゃない。貯めたお金を使って社会を豊かにすることがゴールだ。これからはカッコいいお金の使い方を見せなきゃ。まだまだ道半ばだよ」

戦後復興期から高度成長にかけて、日本人はひたすら貯蓄に励んできた。21世紀に入って経済成長が行き詰まると、今度は自助努力の名の下に、老後の資産形成へと駆り立てられた。
そこには、お金を使って豊かな暮らしを紡ぎだすという本来の目的が存在しない。積みあがった2000兆円はそのことを寡黙に物語る。

バブル期の放漫な消費行動を経て、日本人は生きたお金の使い方を学んだのだろうか。そのことを振り返り、考える余裕もないまま、バブル崩壊後は再び生活防衛を強めることになる。
手取り収入に占める消費支出の割合を示す平均消費性向は、70〜80年代は70%後半だったが、直近は60%台と歴史的な低水準に沈む。将来不安にコロナ禍も重なり、お金を使うアイデアはなかなか湧いてこない。

澤上氏はカッコいいお金の使い方に基準はないと考える。「もちろんためたお金で贅沢をするのは自由。でも願わくは社会を豊かにするためにも、お金を使って欲しい。そんな大人がたくさんいる社会で育った子供たちはきっと幸せだと思うよ」
芸術の都フェレンツェの礎を築いたメディチ家のように、生きたお金の使い方によって豊かな歴史が育まれていく。個人資産2000兆円の節目に際し、そのことに目を向けたい。

おおよそこんな記事だが、最後のメディチ家のくだりは日本にそんな貴族に相当するような人がいるだろうかと考えれしまう。しがない庶民はどんなお金の使い方をすればいいのか。
身の丈のお金の使い方で心が豊かになる金の使い方、そんな気分になりたいとは思うが。