’22.2.23
2階建ての世界の2階が騒がしい。欧州連合(EU)はロシア軍がとうとうウクライナ東部に進軍したと発表した。欧米はロシアへの経済制裁を発動する。民主主義と強権主義(最近は社会主義とは言わないようだ)の分裂が鮮明となり、世界の2階の騒ぎは一段と激しくなった。

世界の1階の住民は2階を見上げて不安を募らせる。一部の人は避難の準備をしたり、マネーを安全資産へ退避したり忙しい。
新型コロナもまだまだ安心ならないが、もうインフルエンザと同じように扱ったらいいと規制を解除する国も現れた。2階の騒ぎは一階の住民にはうるさいけれど、一部の住民を除いてはいつ自由に外出しておいしいものが食べれるようになるのかなどのんびりしたものだ。2階の騒ぎはあすへの生活に影響するとは思ってもいない様子だ。

2階の騒ぎをどう見たらいいのだろう。第2次世界大戦後、地域紛争はあったが、大国がぶつかる戦争は避けられてきた。今回の事態は、80年近くにおよんだ「平和の時代」が終わろうとしている。
安定がほころんでいるのは、欧州だけではない。アジアでも中国が台湾海峡、東・南シナ海で軍拡に走り、北朝鮮が核ミサイルを量産する。ロシアの全面侵攻を止めなければ、西側諸国の足元を見透かし、中朝も強硬な行動に拍車をかけるだろう。

2階がこんな状況になったのはなぜだろう。一番の原因は、米国の体力と気力の衰えだ。米国は約10年前、もはや「世界の警察」ではないと宣言「G0」の世界となった。
アジアの軍事バランスは年々、中国優位に向かっている。通商でも、米国は環太平洋経済連携協定(TPP)から抜け、その空白を埋めるように中国が加盟を申請した。
米国はトランプ前大統領の横暴から準内戦ともいえる国内分断に追われ、同盟強化への取り組みもおぼつかない。こんな状況をにらみ、中ロはさらに結束を誇示し、米国主導の秩序を壊しにかかっている。

そもそもニクソン大統領が50年前の72年2月訪中以来、米中は連綿と関係を築いてきた。中国を民主主義国家に変貌しようとする無謀な米国の思惑があったとしても、問題が起きたときは両国で取引ができていた。
ところがトランプ前大統領が2018年に対中政策を変更して大きく変わった。中国に全面的な圧力を加え、孤立させようとするやり方に転換した。中国政府は米国との関係を改善させたいと繰り返してきた。それなのに米中関係はトランプ氏が台無しにしてしまった。
2022年は危険な年だ。米国は中間選挙、中国は5年に1度の共産党大会がある。米中関係の障害はいくつもあるが、台湾問題ほど危険なものはない。ロシアのウクライナ侵攻は中国の台湾侵攻のいい刺激になる。

今日の記事は朝刊から、世界の人間社会の1階と2階の様子を書いたものだ。