’22.2.25
EUのメディアは、ロシアはウクライナの首都キエフを制圧して傀儡政権を建てると言っている。「ウクライナは加盟国でない」からと、NATOは武力介入はしないと宣言。どうなることか。

日銀が2%の物価上昇を達成できなくてあたふたしているうちに、世界的なインフレが日本にも押し寄せてまたあたふたしている。
何もないように繕ってるが、関係者の内心は穏やかでないだろう。庶民のわれわれも実入りが増えればいいが、物価だけが上がるのでは死活問題だ。
およそ100年前にロシア革命を指導したレーニンが語った言葉があるそうだ。「資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだ」。 この至言を世に知らしめたのは英国の経済学者ケインズであるそうな。以下は日経のコラム「Angle」から。

「レーニンは全く正しかった。社会の基盤をくつがえすには、通貨を堕落させることほど巧妙で確かな方法はない」。ケインズは1919年にしたためた「インフレーション」と題した小文にこう論じた。
「通貨の堕落」とはお金の価値が下がり、モノの値段が上がるインフレを意味する。レーニンは資本主義という敵がインフレの泥沼にはまれば、勝利は自らの手に転がり込んでくると看破していた。

ウクライナに侵攻したプーチン大統領は、レーニンにならおうとしているのだろうか。対ロ制裁に踏み出した欧米日への対抗索として、欧州向けのガス供給を止める構えをみせる。エネルギー価格を押し上げ、世界にインフレの種をばらまく思惑が透ける。
バイデン大統領はそれを阻もうと、欧州へのガス供給の拡大に動く。中東のカタールに液化天然ガス(NLG)の欧州向け輸出を増やすように要請し、日本にも余ったNLGを融通するよう求めた。米国自身、2022年にNLGの生産能力を大幅に引き上げる。
米国は歴史的なインフレ局面にある。1月の消費者物価指数(CPI)は前年同月に比べ7.5%上昇し、40年ぶりの高い伸びとなった。国民の不満は限界に近い。NLGの供給を増やして世界的な物価上昇の圧力をやわらげるのは、バイデン氏が自分の政権を守るためでもある。

インフレを最も恐れているのは中国共産党かもしれない。1989年6月に軍が学生らの民主化運動を鎮圧した天安門事件は、年率20%に迫るインフレに人びとの怒りが爆発したのがきっかけだった。
一党支配が崩れる瀬戸際まで追い込まれただけに、インフレの芽が少しでも顔をのぞかせると、あらゆる手を尽くして摘み取ろうとする。
中国のCPIは2021年に前年比0.9%の伸びにとどまった。しかし、卸売物価指数はエネルギー価格の高騰を背景に前年より8.1%上昇した。26年ぶりの高い伸びだ。
習近平国家主席はインフレへの警戒を強めているのだろう。北京冬季五輪の開会式にプーチン氏を招き、ロシアから中国へのガス供給を増やす約束を取り付けた。
開会式にはワシントンでバイデン氏にあったばかりのカタールのタミム首長や、中東の有力な産油国であるアラブ首長国連邦(UAE)の首脳も呼んだ。インフレを防ぐため、エネルギーの安定調達に向け着々と手を打つ。

日本はどうか。エネルギー価格の高騰や円安を背景に、身近な商品の値上げが相次ぐ。自民党は18日、ガソリンや灯油の価格を抑えるために政府が元売りに支給する補助金の上限を、今の5円から25円超に引き上げるよう提案した。
岸田首相は23日、記者団に「今後さらに原油価格が上昇し続けたとしても国民生活や企業活動への影響を最小限に抑える」と語った。しかし、補助金頼みの価格抑制策では効果は限られる。

レーニンの予言が正しければ、世界で生き残れるのはインフレを制した者だけだ。欧米とロシアの対立が決定的となり、政権や体制の存亡をかけた物価との戦いは新たな段階に入る。

日本は政権も体制も関係ないか。