’22.3.12
内戦ではない、国と国との戦いだ。これを戦争と言わずして何というのだろう。ロシアのウクライナ侵攻とか侵略とかという言い方が問題にjなるが、これは国と国との戦争だ。
第2次世界大戦の後の世界秩序を破るロシアの侵略。強い武器を持つ国が平常な暮らしをする国を侵略し、その行為をどの国も止めることができず嘘のつき放題、世界の司法でも裁くことができないでやりたい放題。
この戦争の結末はどうなるのだろう、ロシアのプーチン大統領にしてみると何がしかの満足いく結果が出るまでは止める訳にはいかないだろう。
プーチンが戦争を仕掛けて3週間がたつ今、米スタンフォード大学の歴史学者がインタビューに応えている。

歴史家にとって今回の事態はウクライナが直面する幾多の災難の最新版にすぎない。プーチン大統領はロシアとウクライナは歴史的にひとつというが、全く真実ではない。ウクライナは17世紀の混沌下でも別個の存在でピョートル大帝後に編入されただけだ。
我々はすでに「第2次冷戦」の中にいる。第1次の冷戦はソ連が主導したが、今回は中国が上位でロシアは下位のパートナーだ。大西洋でなく太平洋地域での冷戦になった。

習近平中国国家主席は明らかに侵略にゴーサインを出した。北京冬季五輪後の行動を求め、ロシアに制裁を科さず、経済的に助けることすら合意している。
プーチン氏はウクライナの結束と欧州の経済制裁の厳しさを予測できなかった。数週間で勝利宣言する相当な可能性はあるが、短期的にそれ以上の軍事展開に関心はない。
北大西洋条約機構(NATO)との闘争には勝てない。核使用の発言ははったりだ。だがどこかで、バルト諸国、ポーランド、モルドバの問題に発展する可能性がある。
プーチン氏が狂気にあるとは思わない。権力が彼を腐敗させ、現実から遠ざけた。彼はウクライナの強い反抗やロシアの経済的なリスクを過小評価したが、これは現実から逃避したものが陥る一種の誤算だ。
広大な宮殿で、自分を恐れ、望むことだけ言う人々に囲まれてロシア皇帝の人生を送っている。「プーチン皇帝」によるロシア帝国の復活を彼は期している。
できる限り残虐な方法で攻撃の速度を上げる誘因がある。勝てなければ自国での立場がぐらつく。ゼレンスキー大統領、そしてウクライナに対する勝利を手中に収めることが差し迫った課題だ。強い立場で和平交渉に臨めるからだ。
制裁の縮小や削減のため、いくらかの譲歩には前向きだと思う。究極的な合理主義者で計算高い。彼は狂っているのではなく、邪悪なのだ。

習近平はプーチン指示が間違いだったか思案せねばならない。今年は共産党大会がある。ロシアが経済的な混沌に陥れば何が起きるか分からない。10%の確率でプーチンは失脚する。
中ロは事実上の同盟をつくり、冷戦構造は鮮明になる。歴史的に2国の同盟が長続きしたことはない。中央アジアや東アジアへの野心を明確にする中国はロシアの潜在的な脅威だ。いずれ中ロ関係は摩耗する。お互いを真の意味で信頼していない。
中東や極東に目を転じると、イスラエルとイラン、中国と台湾も近い将来に火が付きやすい。紛争のリスクは上がった。
習近平の究極の目標は台湾を共産党支配下に置くことだ。彼が自問するのは「自分たちにも、ロシアにした制裁措置がやってくるか」。答えはノー。中国経済は巨大だ。米国経済と深く関連し、巨額の米投資が流れ込む。ロシアと同じ措置を取れば、もっと傷がつく。

ウクライナは外的な権力に反抗する長い歴史をもつ。キエフが陥落してもゼレンスキー氏が殺されたり逮捕されたりしても戦い続けるだろう。
台湾がこの種の戦いをする用意があるとは全く思えない。このことは習近平氏を勇気づけるだろう。

インタビューの内容は以上だ。ロシアがウクライナを制圧した後の世界はどうなるのか。今までのように、EUはロシアからエネルギーを買うことはできないだろうし、世界経済の仕組みが変わってくる。
日本は中国、ロシアという大国に挟まれた小さな国だ。ウクライナと違って日米安保で米国が守ってくれるか。米国も今やパートナーと一緒になって動かなくては一国だけではどうしようもない国になっている。
あらためて世界地図を眺めてみると、米国は大西洋を隔てて欧州と近い。沖縄は台湾と目と鼻の先だ。
日本を真ん中にして太平洋ばかりが目立つ地図では、国の位置関係を錯覚する。
それにしても安部前首相は北方領土問題でプーチンにすっかり騙されたものだ。このところのロシアの高官の話を聞いていると、嘘を平然という姿に驚く。