’22.4.10
なぜ心に鬼が宿るのか 小松 和彦氏

最近、根本的な疑問を持っています。文化人類学を学び、異形の他者を見て「多様性がいい」と言いながら、実は「自分の方が上だ」という差別意識を身につけてしまうことがあるのではないか。そんな疑問です。
日本文化を海外に広める専門家の中でさえ、アジア人を見下す視線がある。多様性や共生を目指しながら、自分の心に鬼を育てている面があるのではないか。(異形の他者に優しく)

だから怖いのです。常に心に鬼が育たないように意識しないと、フッと鬼に誘惑されそうな気がする。人に鬼のラベルを張った瞬間、自分にも鬼が宿ります。相手の邪悪を排除すれば自分が邪悪になる。集団で鬼探しをすれば魔女狩りになる。国が互いに鬼と見れば戦争に成ります。

だからカタルシス(心をすっきりさせる)を物語に求め、異質を楽しむ知恵が必要です。人工知能と共生する時代になっても、鬼や妖怪は生まれるでしょう。(不安のガスを抜く)
メディアは変われど、物語を紡ぐ人間がいる限り、鬼文化の役割は変わらないと思います。


平成皇室の執事・語り部  故渡辺 允氏(元侍従長)

「象徴天皇とは何か」を語り合うと、「ひと言で説明するのは難しいね」と言いながらも、「私はよき日本人の姿がそこにあると思っている」と答えた。
「災害被害者、社会的弱者など困難な境遇にある人たちに寄り添う。皆、非常になぐさめられるし、安心する。その姿を見て私もほっとする。そういうものじゃないかな」

天皇家の三太夫(執事)として、その気持ちをくみ取ることを第一の仕事と心得ていた。立場上、考えを明言できないことも多い天皇、皇后に代わって皇室の実情を分かりやすく説明することに腐心し、平成皇室の語り部たらんとした。
著書「天皇家の執事」は皇室を担当する記者の教科書といわれた。


人生の先輩方のいい話、いい仕事を読んで、なんとなくほっとした話 二題。