’22.6.29
新聞記事はファクトを伝えるニュースと編集者による個人的意見とがある。社説も新聞社の方針に沿った論調になるのだろうが、それ程大げさなものでなければこれも編集者の意見となる。新聞に書かれていることはすべて正しいと思って読んでいると、とんでもないことになる。
私も新聞記事をパクるが、前にも書いたが思いが一緒なら私のつたない文章よりパクる方がよほどよい。
そんなことで、今の世界の状況を新聞記事を見ながら考えてみる。

日本は侵略されたら米国に守ってもらえるという、際立った特権に包まれていると思っている。このところの世界の潮流を見ると、日本がよって立つ米国主導の世界秩序がいつまで続くのか心配になる。
言われるようにロシアのウクライナ侵攻に対し、国連の人権理事会からロシアを追放する国連決議では、棄権・反対・無投票が100か国にのぼり、賛成の93か国を上回った。侵攻を非難したり、制裁したりしている国々は、西側諸国を中心に世界人口の36%にすぎない。

インドやブラジル、南アフリカのように中立を決め込む国々が32%。残る32%はロシアの主張を理解するか、支持する中国やイランなどである。バイデン米大統領をはじめとする西側リーダーは、世界が対ロシアで結束していると力説するが、実態は米国主導の秩序はもはやないに等しい。
米主導秩序が健在ならば、先日開催されたアジア安全保障会議でもロシア非難で一致するはずがそうはならなかった。

米国の指導力は約10年前から衰えていたという。根拠は次のようなものだ。
第一
2012年8月、オバマ大統領はシリアのアサド政権に、化学兵器の利用は「レッドライン」だと警告した。だが13年、同じ兵器が使われても軍事介入しなかった。
第二
オバマ大統領は13年、「世界の警察」を担わないとも宣言。14年にロシアがクリミアを併合し、中国が南シナ海に軍事拠点を設けても介入しなかった。
第三
トランプ時代、米国は自国中心主義を掲げ、世界の指導者から降りた。

そして米主導秩序に代わって現れてきたのは、3極化の秩序だ。3つの異なる勢力がせめぎあう世界である。
第一の勢力
米国や欧州連合(EU)、日韓豪、英国、カナダと言った西側陣営
第二の勢力
中国とロシアを中心に、イランや北朝鮮が加わる
第三の勢力
どちらにもくみしないインドや南アフリカ、インドネシア、トルコ、ブラジルといった「中立パワー」

3極秩序が生まれる理由は2つある。まず、西側と中ロが相手への対抗上、より濃い結束に向かう。次にその間に挟まれるインドやトルコなど新興国が国力を増し、西側、中ロのどちらにも偏らず、独自の路線を追求する行動を強めていることだ。
大国との同盟に頼らない分、中立パワーは価値や原則に縛られるのを嫌い、自国の都合を押し通す。このため、西側や中ロほどこには「極」としての団結は固くない。主要国はこんな中立パワーを西側に引き寄せ、西側主導の秩序に戻していくことが目標だ。

それには戦略上、各国が何を必要としているのかを個別に見定め、互いの利益にかなう協力を重ねるしかない。日本としてはまず、今の世界の秩序を見定め米国主導の世界秩序ではないことを強く認識し、そのことを国民も強く認識して行動していくことだろう。
それにしては、国会での与野党がこんなことを真剣に議論しているようには全く思えないのだが。