’23.6.1
国民の象徴としての天皇、平成天皇はこの象徴の意味を深く考え行動したという。日本のあり様を述べることもなく、政治にも口を出せない何んとも歯がゆい立場と思うことはないのか。こんなことを考えるのは、浅学非才な人間の考えることなんだろう。
今上天皇も令和になって、どんな日本にしたいなどとの発言は聞いたこともないし言ってもないのだろう。そんなことを思いながら、今朝の日経の「大機小機」のコラムを読んだ。

日本は人口減少のただ中にある。周囲を見渡すと、観光客を含め、知らぬ間に外国人ばかりである。しかも所得が増えない。この国がどこに漂着するのか、不安になる。
かつて日本の夢は所得を倍増させ、欧米の生活水準に追いつくことだった。この夢を目指し、国民は懸命に働いた。しかし欧米に並んだ瞬間、目標を失い、結果として停滞に迷い込んだ。

今も明確な目標がない。政府は人口減への対策を講じるが、札束で頬を張るに近い。発想が「産めよ殖やせよ」の延長にしかない。日本経済が停滞しているとはいえ、世界的基準では依然として豊かであり、社会の不満も大きくない。国民の真の願望を察知し、即応しなければ、少子化対策は空振りしよう。
本筋は、経済面以外の夢を描くことにある。
現代的な豊かさの尺度は生活の質に移った。自由時間であり、家族との時間である。これらを得るため、多くの国民は義務的に働く。
解決策はないのか。その鍵はDX、すなわちデジタル技術の応用と、そのさらなる深化にある。

国民はDXにより通勤地獄から解放されることを知った。必要に応じて職場に行くだけで、ほぼ仕事は完了する。製造現場の多くは自動化でき、購買はネット化できる。役所との関係も同様だろう。
教育も、基本知識はオンラインで教えられる。応用や実験を教員が指導すればいい。加えて、将来の人材のベースがデジタルにあることを銘記すべきである。教育資源の再配分が必須となる。
医療はDXによって革命的に変わる。診断に人工知能を多用すればいい。それを阻むのは主に旧来の規制である。制度を刷新すれば、地方でも高度医療を享受できる。

つまりDXを生かせば、仕事、消費、教育、医療など、大都会を離れても何不自由ない生活が実現する。広い家と豊かな自然環境も得られる。
子どもを含め、家族との時間が増す。とすれば、もう一人家族を増やしたいとなろう。さらに大都市の人口が分散するという防災上の利点も生じる。困るのは都市部で財を築いた既得権者だけに近い。
夢を描き、現実に向けた具体策を講じるのが政治である。ぜひとも質的な豊かさを追求してほしい。

こんなコラムだ。非常にわかりやすい理屈ではあるが、実現するのはどうかと思う。そのことが夢をなくすことになるのだろう。
こんな簡単ではあるが難しい目標を、今の政治家は語ってくれるだろうか。始めなければ始まらない。若者を巻き込んだ、夢に向かって令和は進んでほしい。今上天皇が、こんな夢を述べることはできないものだろうかと又思ってしまう。