’24.1.23
日経朝刊のコラム「春秋」は、いまいち上手くないと思って読んでいる。だが、きょうのコラムは今の私の心境を代弁しているようでパクった。こんな気持ちで毎日が過ごせればいいと思う。

誰かと競うためではなく、見せびらかすためでもなく、ただ自分一人を満たすものだけに囲まれた静かな生活にひかれる。年齢を重ねるほどに憧れが強くなった。
映画の中でそういう主人公に出会うと、本筋に関係なく、格好いいなと、ディテールに見入ってしまう。

アクション映画「イコライザー」の主役はホームセンターの店員。眠られない夜にはなじみのダイナーへ行き、いつも同じ席に座ってお茶を飲みながら本を読む。「老人と海」「見えない人間」ーー。
亡き妻が挑んで果たせなかった名作100冊の読破が目標という設定だ。単調な暮しを読書で潤す中年男のたたずまいがいい。

「タパーソン」の主人公は路線バスの運転手である。時間通り型通り繰り返す日々。毎夜犬の散歩がてらバーに立ち寄り、一杯だけビールを飲む。それ以外に、彼には詩を書くという人生の喜びがある。読者は今のところ妻だけ、それで十分。
心にあふれる言葉をペンでノートにつづる。詩を通してありふれた日常が輝く。

そして公開中の「パーフェクト・デイズ」。役所広司扮するトイレ清掃員は世間的には貧しく孤独なのだろう。でも好きなロックのカセットを聞きながら運転し、就寝前にW・フォークナーや幸田文の本を読むときの表情は満ち足りている。
内面の生活さえ豊かならば人生は幸福でいられる。老いもひとりも恐れることはない。

とまあこんなコラムだ。なかなか「春秋」にしてはよく書けていると思う。・・・・・。