’00.9.23

小さなわたしのテリトリーの庭にも、やっと秋の気配が感じられるようになりました。正に季節の花、彼岸花があっという間ににょきにょきと芽を出したかと思うと花を咲かせました。もちの木も今年は点々としか実を付けていませんが、下の方から色づいてきています。そして、なぜかしら耳につくのが雨蛙の鳴き声です。今日は久しぶりの雨になりましたが、雨の気配を察してか朝からしきりと鳴いています。一匹鳴くと、競うようにしてケ、ケ、ケと鳴き始めます。

夏の間は、朝起きると決まって庭の水道栓近くの壁にへばりついていました。ある時なんかは、その水道栓の流しに小さな凹みがあり、温泉に浸かるような格好でその凹みで水に浸かっていました。
なんと風流なと思って、別にかまわずにいました。昼頃になって水を呑みに流しへ行くと、まだその凹みに浸かっているではありませんか。変だなーと思って鼻を近づけると妙な匂い。水は温まって蛙は昇天していたのです。これには驚きました。

日頃は木の葉の裏とか目立たない所にじっとしていますが、時々遭遇することがあります。たいがい近づくと逃げて行くのですが、たまにどう間違ったのかわたしの方に飛びかかってくる者もいて、不意を食らって後すざりしてしまいます。端から見ていると、なんと臆病なと見えることでしょう。

そして今日何ともみっともない光景を、ご主人達にさらしてしまったのであります。
いつものように玄関のたたきでうつらうつらしていました。なにかの気配を感じ、そっと目を開けて見ると目の前に例の雨蛙がいるではありませんか。わたしはびっくりして立ちあがると、むこうもびっくりしたようでわたしの方に向かってジャンプ一発。
わたしは驚いて、立てかけてあるバリケードを越えて廊下へすっ飛んで行きました。どう間違えたのか雨蛙も廊下に上がってきて、わたしめがけて突進するではありませんか。動転のあまり廊下で右往左往、その物音にご主人達が何事かと廊下へやってきた時は曲者はどこかへ消えていました。
わたしはばつの悪さも半分あって、曲者の跡をあっちこっち嗅いで回りましたがどこかへ消えていません。「ラムどうした。何かいるのか」

ひと騒ぎあった後、またいつもの静寂。そして奥の風呂場で主人の声、「なんでこんな所に雨蛙が居るんだ。・・・。ラムはほんとに臆病なんだから。」 臆病はわたしの、いやラブの取柄なんです。