’01.11.3

カレンダーも残り一枚になりました。午後から降り出した雨は夜には嵐になって、外では風がうなってます。ゲージの中でこうして一人でいると、寂しくなってくるような夜です。
「ラム、どうだい外に出るかい」 タイミングよく主人が声を掛けてくれました。

わたしはゲージから出るときに、決まってする動作があります。主人はこの動作を、わたしがゲージから出る時のちょっとした儀式だと言って楽しんでいますが、わたしにとっては緩慢になった筋肉に活を入れる大事な行為なんです。
先ずゲージの出口から体を半分外に出して、大きく伸びをします。前足を出してぐっと腰を落して後ろに引くのです。体を戻してから、こんどは体を思いっきり前へ出して、後ろ足を片足づつ伸ばします。
ゲージから出ると、こんどは思いっきり身震いをします。頭からはじめて、胴体、そして最後はしっぽの付け根から先端まで、波が伝わっていくような感じで身震いをして行きます。これでゲージを出るときの一連の動作は終わりです。

この動作が終わると家人がわたしに声を掛けてくれるのですが、これも各々掛けてくれる言葉が決まっています。
お母さんのときは 「ラムはいい子だから」 が決り文句です。この声を聞くと、ついゲージの上にあるボールや紐をくわえてお母さんのところへ持っていきたくなるから不思議です。
上の兄さんは 「ラムちゃんかわい〜い〜」 といいます。お兄さんの頭のてっぺんから聞こえてくるような声です。この声を聞くと、自然とゴロンと玄関のたたきにひっくり返ってしまいます。なんだか体の力が一気に抜けてしまうのです。

主人は何の愛想もありません。いきなり玄関のドアを開けて、わたしを庭に出してくれます。決まってすると言えば、わたしが庭に出ると一緒に出てきて、ドアの前でこぶしを握って立っていることです。
わたしはこぶしを鼻で突っつくと、握ったこぶしを開いて見せてくれます。なにも握ってないことを確認してわたしは納得です。
今夜も嵐の中、庭に出してもらい寝る前の用足しをして玄関に戻ると、ドアを開けながらハウスのコマンドです。わたしがゲージに入ると、主人は決まって 「グ〜グ〜」 と言います。あ、忘れていました、主人の口癖はこの 「グ〜グ〜」 でした。
雨と風が一段と強くなってきました。ゲージの中からでも、窓を打つ雨の音が聞こえてきます。わたしは丸くなって眠りにつきます。今度はわたしが 「グ〜、グ〜」と言う番です。