’00.8.9

夕方、主人とお母さんが車で帰ってきました。買い物に出かけていたようです。いつもだと、荷物を下ろして、借りている近くの車庫まで車を置きに行くはずです。たまにわたしを乗せて、車庫まで行ってそのまま散歩に行くこともあります。

「ラム、おいで、車庫まで行こう」 予想通り、わたしを車庫まで乗せて行ってくれるようです。ドアが開き、わたしはちょっと助走をつけて助手席に乗り込みます。いや、格好よく乗り込むはずでしたが、後ろ足が空を切って上半身だけシートに乗っかったんですが、そのままずり落ちてしまいました。格好悪いったらありゃしません。
「アハハ、体重オーバーか。やせないとな〜」 再度チャレンジして、今度は上手く助手席に乗り込むことができました。

車庫に着き、エンジンを切ってしばしの静寂があたりを包みます。主人はそのままの姿勢でじっとしています。わたしもじっとして、鼻を精一杯働かせて当たりの様子を伺います。どうも主人は妙な癖があって、意地悪か何か知りませんがこんな間を作るのです。わたしはそんな間が持たず、鼻と目をしきりと動かしながら主人の出方を待ちます。

「ラム、こっちを見て」 こっちを見てて、横にいて前を向いたままこっちをみてってどう言うこと。チラッと主人の方を見ますが、主人は前を向いたまま、何かを覗きこんでいる様子です。わたしも主人の向いている方向に目をやると、やや、主人と目が会いました。チラッと横を向くと、主人は相変わらず前を向いています。わたしも前を向くと、また主人と目が会いました。

どうしてと思って、懸命で前を向いて主人の目を見ていると、「どうだ、見えただろう」とわたしの方を向いて話しかけます。わたしは懸命で前を向いて、主人の目を探しますが見えなくなっています。
立ちあがって、前を探しますがガラスがあるばかりです。
「ルームミラーだよ」 簡単に主人は言います。鏡は何度も見ているんですが、静寂に包まれた車の中の密室で落ち着いて見ると、カガミって不思議なものです。
「ラムもカガミの後ろを探すんだ、これはすごい発見だゾ」 主人一人興奮してました。