’00.8.19

夕方主人と花見川へ散歩に出かけました。まだ日はそんなに傾いてないのですが、渡る風は心地よく感じます。田圃の稲はもう大きく穂をたれて、きらきら光るアルミのテープや薄汚れたマネキン人形や、黒いビニール袋があちらこちらに立てられています。そんな中わたし達が田圃のそばを通るたびに、わっとスズメの集団が飛び立ちます。どうもスズメよけは、余り役立ってないようです。

わたしは田圃のそばを通りながら、縁に生えている葉っぱの周りがざらざらとした草をむしって食べました。「胃の調子でも悪いのかい。ゆっくりお食べ。」そう言って主人は立ち止まってくれました。あまりこんなことはないんですが、今日ばかりはこの草が無性に食べたくなったのです。「先輩のサンダーはこの草を食べるとすぐ戻したんだけど、ラムは食べっぱなしだな」あきれたような声で主人は言いますがわたしは無視、ただ飲み込むとき喉越しはよくありません。

花見川は鳥も魚も人も多くて、結構な賑わいです。川鵜、かも、しらさぎ、かもめ、そして時々ツバメが水面をかすめます。ボラが時々跳ね上がっては水面を叩きます。川岸にはこのボラをねらってのギャグ釣り、優雅な鮒釣り、そしてシーズン到来のはぜ釣りと結構な釣り人が出ていました。時々立ち止まっては釣り人の様子を見ますが、正直わたしはそんなのを見てもちっとも面白くありません。早く帰って食事がしたいんです。

行きはいつものように体半分主人より先に歩きますが、帰りは鼻一つ遅れてハアハア言いながら主人に付いて歩き、やっと家へ辿りつきました。期待した食事もあっという間に食べてしまいました。主人は庭のベンチに腰掛けています。少し薄暗くなって、渡る風もいっそう気持ち良く感じます。「今年のもちの木の実は少ないな、ヒヨドリが可愛そうだな」。わたしはベンチの下で寝そべって、主人の独り言を聞いていました。呼吸も落ち着いてきました。そしてゆっくりと立ちあがってベンチに登り、体半分主人に預け次ぎの主人の独り言を待ちました。