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オーナーのドッグショーの楽しみは
オーナーのドッグショーの目的は
ブリーダーとオーナーの違い


オーナーとドッグショー

このコーナーの「ショードッグ」の所でも書きましたが、JKCのサイトにはドッグショーのことを
「ブリーダーとドッグショーの関係は多くのブリーダーがドッグショーをさかんにし、ドッグショーによって良いブリーダーが育てられ評価される」と書いています。
ドッグショーはブリーダーが作出した犬の「犬種標準に基づく品評会」の場なのです。

スティーブン・ブランディンスキー著「THE TRUTH ABOUT DOG」にこんなことが書いてあります。
犬種標準をつくった同じ人々が、実は繁殖業者であり、その標準に合った犬を繁殖する。こうして、犬種標準に適合した犬を求める人々に、自分達が繁殖した犬を売りつけることができる。
いかなる鑑定の世界でも、一定のまやかしが存在する。それはワインの味の鑑定でも美術品鑑定でも同じこと。
しかし、とりわけ犬種標準はひどく恣意的で無原則である。2、3年ごとに変更されること自体、犬種標準が一種のインチキであり、少なくとも非常に自由裁量的であることを正直に示している。ほかのほとんどの分野に比べても、それはひどい。

人間は普通、めだつものに引かれる。ブリーダーはその点を利用したドッグショートの循環的商法を長きにわたって展開し、現状を確立した。犬を目立たせるには、ルックスが一番。
犬と犬とを際立たせるのも、ルックスだ。人々は、ドッグショーで優勝した犬を、それだけの理由で欲しがる。この仕組みによって、完全なる自己完結的循環商法が成立する。

そのルックスを求めて
すべての計画的繁殖は、望ましい形質を持つ個体を繁殖に参加させ、そうでない繁殖を排除するという原則に基づいて行われる。
両親が同じでも、親から受けつぐ遺伝子の組み合わせは、子供同士で異なる。これが異変を生み出す第一の仕組み。まさにその仕組みが、特定の固体の望ましい形質を安定的に確実に継承させるという、繁殖の究極の目的とは逆の方向に作用する。

そこで繁殖家は、次のことを知っている
遺伝子がどうなっていようと、望ましい形質を持った犬を、父母、子、兄弟姉妹などの近親犬と交配すれば、その形質に関係する遺伝子が次世代に伝わる確立が高くなる。近親交配は、まれにしか出現しない優良形質を、集団の中に急速に広める手段だ。

しかし
近親交配は隠れていた劣勢の、悪い形質が表面化する。こうして、近親交配する前には目立たなかった劣性遺伝子による疾患が、近親交配の後に出現することになる。
年齢が進んでから発病するような病気、たとえば、がん、進行性神経障害などであれば、交配するときには気づかれないので問題は深刻だ。
最近出現した遺伝子的疾患は、以前は潜在的だった問題が表面化した結果である。それらは、数多く多様で、またしばしば奇怪である。

さらに重要な遺伝的な問題がある。ルックスに基づいて選抜するのは容易である。なぜなら、ルックスは文字通り、誰の目にもはっきり見えるからだ。
しかし、良好な行動特性の遺伝的素質を選抜するのは難しい。どんな行動でも、多くの遺伝子が相互に作用し合い、そのうえ、犬が育つ環境の影響を受けて発現する。
行儀のよい犬を選んで繁殖させることはできるが、その子も行儀がよいとは限らない。われわれは、行動を支配している遺伝子についてはほとんど何も知らない。
「協調性」とか「しつけやすさ」の遺伝子などは存在しないし、「群れをつくる」遺伝子も存在しない。
言葉を変えれば、「協調性」があり「しつけやすい」両親から、「協調性」があり「しつけやすい」子が生まれる保証は、遺伝的にはないのだ。


ブランデンスキーの言葉を借りて、ながながとドッグショートとそれに関わるブリーダーのことを見てきました。それほど極端でないにしても、本質はそんなことだろうと知っておくことは、犬のオーナーとして必要なことだと思います。
ブリーダーでない一般の愛犬家(オーナー)が、ドッグショーで愛犬を出陳することによって、望まれる形質を持った犬が多く発掘されることは、限られた範囲での繁殖を少なくし、異系交配の機会を増やすことになります。

それともうひとつ大切なことは、愛犬のオーナーは、何ゆえに自分の飼っている犬を愛するのかという、ブランデンスキーの無言の問いかけです。
ルックスがいいから飼っているのですか、ドッグショーで優勝した犬だから飼っているのですか。

健康で優秀な犬を飼うのなら雑種犬を飼いなさい。これは誇張でなく、彼らこそ犬の正当な継承者だと。
「真の犬である彼らは、われわれ人間と共に進化し、われわれ人間社会に適応し、人間社会を自分のものにした動物である。
彼らは自分自身を大きく変えて、それをやり遂げた。人間の気まぐれとわがままな仕打ちをかいくぐり、古代の好人物と仲良くする能力に基づいて自然選択されてきた彼らこそ、まさにあるべき姿の犬なのである」

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