MENU5

犬に勝つ

我が家の庭の裏にある原っぱには色んな犬がやってきます。その中の一匹に「幸」という名の牝の紀州犬のミックスがいます。生後5ヶ月です。
なかなか活発な犬で、サリーともすっかり仲良しになってよくフリーで原っぱを駆けているのを見かけます。連れてくるのは別々におじいちゃん、お父さん、それと小学6年生の女の子で、夕方連れてくるのはだいたい女の子です。

いつもフリーでいるところしか見かけないのであまり気にもしていませんでしたが、きょうは女の子がジャーキーを千切って、それを見せながら「お座り」、「ふせ」を教えていました。
そして千切ったジャーキーを投げては、犬を走らせていました。ジャーキーを見せびらかしてしつけるのはどうかと思いながら、投げて走らせるのを見てはさすが私も気になって声を掛けました。
「ジャーキーはご褒美にやるといいよ。なぜジャーキーを投げて走らせるんだい? ボールを投げて持ってきたらご褒美にあげたらどう」
「ボールじゃ走ってとってこないんだもん」
「そう、ボールじゃつまんないんだ。じゃちょっと犬をリードに繋いでみてごらん」

その女の子は私の言う通りに犬をリードに繋ぐと自由でなくなった犬は、勝手気ままに女の子を引っ張って自分の好きな方向へ行こうとします。
「犬をしつけるのには、まずあなたが犬に勝たなくては。そうでないとあなたの命令をきかないよ」
犬はぐいぐいと女の子を引っ張って、自分の好きなところに行きます。
「ちょっとおじさんにそのリードを貸してみな」
女の子に代わって私がリードを持つと、へんなオヤジが来たとばかり首輪が抜けんばかりにあとすざりをして、私から逃げようとします。それは5ヶ月にしてはとんでもない強い力です。

「犬の科学」(スティーブン・ブディアンスキー著 築地書館)という本を読みました。「犬のためにも、犬に勝つ」という見出しでこんなことが書いてあります。
飼い主に対する犬の優越性誇示攻撃行動がひとたび定着してしまうと、そこから抜け出すのは容易ではない。狼の社会力学研究によれば、群れの全メンバーの社会的地位が確定すると、その序列を変更するには深刻な闘争がどうしても必要である。

ひとたび犬が自分がお山の大将だと確認すると、誰かがその権利を剥奪しようとしたとき、犬は真剣に反撃する。もともと自信たっぷりでない人々に、性格を変えろと言っても無理な話。
犬にきちんと命令を下せる飼い主なら、そもそも問題は起きないのである。

お父さんの場合はどうだか分かりませんが、少なくともこの犬は女の子よりも自分が上位にあると思っているのは間違いありません。
私に対しては「何だか威張ったオヤジがきてなれなれしく私を引っ張る。イヤダ、イヤダ。あまりなれなれしく近づくと咬みついてやるから」と言ってるようです。

この「幸」ちゃん、名前の通り幸せな犬になって欲しいものだと思います。