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「前進」の練習

犬にとって「前進」の命令は、「停座」や「伏臥」の命令と違って非常に難しいものと思います。
なぜなら「前へ」の命令で前進させ、「止まれ」の命令が出るまで犬を真っ直ぐ歩かせるのは、犬にとって大変不安で、「前へ」の命令は目的もなしに「真っ直ぐ歩くこと」と理解させねばならないと思うからです。

しかし、犬の立場になって考えると、「前へ」の命令が出たので自分の前方にボールがあるかもしれないので、まあとにかく真っ直ぐ歩いてみようと歩き始め、そのうち「止まれ」の命令が出たので止まったとなると、人間が考えるほど難しい命令ではなさそうです。

実はこの人間が考えることと、犬が命令で動作することはこれほどその動機に違いがあることを理解すると、訓練は意外とやさしいものになるかもしれません。
「前進」の練習では、犬の好物を前に置いて命令を出します。犬は好物を取りに行こうとして前進し、好物のところまで行きます。そこで「止まれ」の命令を出し、犬をその場に止めることから始めます。
「前へ」の命令は、犬に対して「好きなものが正面にあるのでそこに行きなさい」という命令だったのです。言ってみれば犬を騙すことだったのです。

人間が考えていることと、犬が感じることが全く正反対なことがよくあります。よくある例は、スリッパを咥えて逃げて行くのを人間が取り戻そうと追っかけることです。
犬は遊んでくれているものと思って、ますます逃げて回るという訳です。無視をすると、犬も相手にしてくれないのでつまらないと、スリッパを放してしまいます。
ちょっと犬の気持ちになって考えてみると、訓練も目から鱗の落ちることが沢山あるようです。